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50歳までは準備期間。まだ自分のために生き直すことはできる。人生100年時代の折り返し点からどう生きればいいかを、ベストセラー作家が指南。

 

「これまでに100冊くらい本を書いてきた私は、80代に入ってようやく、『本当に書きたいこと』を書くためのスタートラインに立つことができたと思っています。『女性の人生100年』といわれる時代ですが、『前半50年』は、その意味でいうと、本番に向けての『準備期間』でいいんです」

 

こう話すのは、ベストセラー作家の下重暁子さん(83)。最新刊『天邪鬼のすすめ』(文春新書)でその半生をつづっている下重さんだが、著書のタイトルに込めた意味を、こう明かす。

 

「天邪鬼とは民話に出てくる妖怪で、寺の入口などで仁王様に踏まれている小鬼。私は大好きなんです。反骨精神を忘れず、あえて人と逆のことをしてみる。その前提条件は、『自分で考え、自分で決める』。つまり、精神的に自立していることです。それができれば、50代以降の『後半50年』を人に頼らず自分の本当にやりたいことができる。それまで家族のために尽くしてきた人も、自分が主役で生きていくことができると思うんです」

 

若々しく目を輝かせて語る下重さんに、“天邪鬼で生きる”ための知恵を教えてもらった。

 

■一人遊びを楽しむ

 

「小学2~3年生の2年間を結核で療養していた私は、一人の時間の過ごし方に苦労しません。家では読書や音楽を楽しみ、外出すればオペラや歌舞伎の鑑賞などもします。一人遊びが上手であれば、誰に気兼ねする面倒もなく、日々のストレスも軽減できるんです」

 

■主婦業を生かす

 

「主婦というのは、立派な職業だと私は思っています。だって、衣・食・住に教育や経済と、あらゆる方面にオールマイティでなければ務まらないからです」

 

こう力説する下重さんは、主婦をしているあいだに「主婦業を極めてほしい」と話す。

 

「どの方向に自分が長けているのか、やりたいことは何なのか、わかってくるはずなので、それを伸ばしてほしいんです。料理研究家の栗原はるみさんのように経験とアイデアを生かして、専門知識を増やしていくことはできます。私なら、好きなインテリアデザインを極めます」

 

■まわり道をする

 

31歳でNHKを退職し、民放のキャスターとなった下重さんは、各社の仕事を中心に、オファーが絶えない人気アナウンサーだったが「本当にやりたい仕事」はほかにあったのだと振り返る。

 

「そのつどしゃべる仕事はあり、アナウンサーとしては、チヤホヤされてきたと思います。しかし、自己表現にいちばん向いていると思える『ものを書く仕事』は地味でした。でも、チャンスがあればなんでも、エッチな新聞や雑誌でも勉強のために書いた。その経験があったからこそいまがあるし、これから本当に書きたいことを書けると思うんです」

 

50代から新しいチャレンジをする女性には、こんなメッセージを送る。

 

「いますぐやりたいことの結果がでなくてもいいんです。待つことを学び、10年後を見据えてチャンスをうかがいながら、いろんなことを吸収しましょう」

 

■かなわない友人を持つ

 

下重さんがいま、80代で好きなことができるのは、大学時代からの友人の存在なくしては語れないという。

 

「最高齢で芥川賞作家となった黒田夏子さんは4歳で小説家になろうと決めて、ずっと書いてきた。最低限の生活費を稼ぐために仕事は抑えて、残りの時間を執筆に割いてきたんです。私はというと変に器用で、さまざまな回り道をしてやっと目的地にたどりついたところ。黒田さんのひた向きさにはとてもかないませんが、彼女の存在が刺激になっています」

 

■よく寝る

 

50代から新しいチャレンジをするといっても、何より大事なのは、心身の健康だろう。

 

「私が心掛けているのは、8時間以上の睡眠です。『寝ないのが美徳』だなんて迷信です。やっぱり寝なきゃ、長持ちしませんよ」

 

下重さんが説く知恵は、人生後半の50年を自由に生きるヒントになるだろう。

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