画像を見る

「コロナ不況のダメージはこれからが本番。長期戦を強いられることが予想されます」そう話すのはファイナンシャルプランナーの丸山晴美さん。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、経済は緊急事態宣言下で壊滅的な打撃を受けたという。

 

「夏のボーナスは、まだ通常どおり支給する会社が多かったと思います。また、特別定額給付金などで救われた家計もあったでしょう。しかし、冬のボーナスは大幅カットやゼロという会社が増え、さらに残業代カットや雇い止め、早期退職勧告などが横行し、これからしばらく、家計はかなり厳しい状態が続くと思います」(丸山さん・以下同)

 

こうした危機的状況のなかでは、家計の柔軟な管理が大切だと丸山さんは言う。

 

「収入が減ったら、そのぶん何かを削らねばなりません。何を削るのか優先順位を考え、決めたことを実行する行動力が必要です」

 

何を削るのかーー。家庭ごとに事情はあるだろうが、一般的には「固定費から」が鉄則だという。固定費とは、おおよそ金額が決まっている定期的な支出のこと。代表的な固定費は、住宅ローンや家賃などの住居費、生命保険などの保険料、そして、スマホ代などの通信費が挙げられる。

 

なかでも通信費の伸びは大きい。固定電話を持たない若い世代が増えたためか、固定電話代は減少傾向なのに、移動電話と書かれた携帯電話は右肩上がりを続けている(総務省「情報通信白書」[2020])。固定電話を維持する読者世代には、データ以上に重くのしかかるものがあるのではないだろうか。

 

「家計の節約というと、食費や光熱費などに目を向けがちですが、毎日ガマンが必要な“身を削る節約”はなかなか続きません。固定費ならば、一度契約を見直す手間さえ惜しまなければ、あとは努力やガマンは不要。特に通信費は、携帯会社を換えても、品質や使い勝手は大きく変わりません。使い方はそのまま、契約を変えるだけで、コストダウンの効果がずっと続きます」

 

10円、20円の節約より、通信費の見直しは効果が見えやすいのだという。

 

「やはり、格安スマホへの乗り換えも含めた通信費の“テコ入れ”が必要だと思います」

 

格安スマホとは、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクの「大手キャリア」から通信網を借りて運営している通信事業者を指す。自前で通信設備を作るコストがかからず、販売のための店舗もほとんど持たないので人件費なども抑えられ、大手キャリアより通信料が安い。MMD研究所によると、大手キャリアの平均利用料が月8,023円に対し、格安スマホは月2,889円だ(’19年12月)。大手キャリアとして格安スマホの料金の差は、月5,000円以上にものぼる。

 

料金以外にも、大手キャリアと格安スマホにはさまざまな違いがある。

 

【大手キャリアと格安スマホの比較】

〈回線〉大手キャリア:自前/格安スマホ:レンタル
〈店舗窓口〉大手キャリア:多い/格安スマホ:少ない
〈サポート〉大手キャリア:手厚い/格安スマホ:あまりない
〈修理に出す先〉大手キャリア:店舗へ/格安スマホ:端末のメーカーへ
〈契約プラン〉大手キャリア:複雑/格安スマホ:シンプル

 

「ユーザーにとっては、大手キャリアの契約プランは複雑すぎて、店頭で説明を聞いてもよくわからないのが悩みの種でした。ですが、格安スマホのプランはとてもシンプルで、理解しやすいのです。ただし、格安スマホは店舗が少ないため、サポートが手厚いとは正直言えません。不安のある方は、契約前にサポートセンターに電話して、すぐつながるか、丁寧に教えてくれるか、などを試してみるとよいでしょう。格安スマホのなかでも対応には違いがあります。また、格安スマホは端末が故障した際、大手キャリアのように店舗に持ち込めないので、端末メーカーに直接修理を依頼することになります。そのため、外国製ではなく、日本製の端末を選んでおくと、修理の依頼などがスムーズにできるので安心です」

 

現在、格安スマホのユーザーはスマホ全体の約20%といわれる。5年前の約5%からかなり増えたが、それでもまだ少数派だ。(’20年3月・MMD研究所調べ)。だが、格安スマホに乗り換える環境はどんどん整備されている。

 

まず’06年には、「携帯番号ポータビリティ」が始まった。携帯会社を変更しても、以前の携帯電話の番号をそのまま使えるというものだ。手続きも、専用の電話窓口で「予約番号」を発行してもらい、それを新しい携帯会社との契約時に登録するだけ。最初は不安だが、実際は拍子抜けするほど簡単だ。

 

また、「2年縛り」といって、2年の契約期間の途中で解約するには約1万円の違約金が必要だった。だが、’19年10月以降の契約では、違約金は最大1,000円になった。

 

「違約金が1,000円なら、格安スマホに乗り換えればすぐに取り戻せます。もう足かせはなくなって、いつでも、いますぐでも乗り換えられるということです」

 

コミュニケーションアプリLINEでのやり取りが増え、メールはあまり使わない人も増えたが、乗り換えでメールアドレスが変わってしまうことが、最後の難点だった。だが、これも以前と同じものを引き続き使えるよう、総務省が大手キャリアに要請する改革案を示した。

 

これで不安要素はほぼ解消できたのではないだろうか。あとは行動あるのみだ。

 

「女性自身」2020年11月17日号 掲載

【関連画像】

関連カテゴリー: