楽天の三木谷浩史氏(写真:時事通信) 画像を見る

楽天ポイントで誘導し、クレジットカードや金融サービスで顧客を囲い込む「楽天経済圏」。そのポイント還元をめぐって「改悪」が相次ぎ、批判がやまない。「1%還元(100円につき1ポイント)」が売り文句の楽天カードでも、11月請求分からポイント付与のルール自体が見直される。物価高で細々とした財テクさえ入り用な今、そこまで手を付けるのか、楽天――。

 

運営元によると、ポイント付与の対象は従来、「毎月のカードショッピング利用金額合計」だったが、「1回のカードショッピング(買い物ごと)の利用金額」に変更される。11月請求分から適用される。

 

具体的にどれほどの不利益が生じるのか。運営元が例示するケースをみてみよう。

 

■ポイント付与のルール自体を変更

 

1カ月間で4回にわたり、計13720円(3980円、5980円、2650円、1110円)分の買い物をしたとする。10月以前は、合計金額の1%に当たる137ポイント(100円未満切り捨て)が付与されていた。

 

11月以降は、本来加算されるはずだった100円未満の利用額が買い物するたびに切り捨てられ、135ポイント(39+59+26+11)に目減りする。2ポイントだけ、と侮るなかれ。経済圏の恩恵を最大化しようと、固定費を含めて月々の決済を楽天カードに「全振り」していたユーザーは、さらに痛手を被ることになる。

 

■インフレ下の「改悪」なぜ?

 

歴史的なインフレで家計が硬直化し、「ポイ活」もやりくりして節約志向が高まるいま、楽天はなぜ、屋台骨のルール自体まで見直すのか。ITジャーナリストによると、業界動向を見極めて他社と足並みを揃えたという。確かに、dカードやPayPayカードのポイント付与ルールも利用ごとの算出だ。

 

ただ、三井住友カードやリクルートカードのように、従来の楽天カードと同じく毎月の合計額で計算しているポイントサービスがあるのも事実だ。リクルートカードの還元率は1.2%の高水準とあって、「改悪」を続ける楽天を見限って乗り換えるユーザーも現れ始めている。

 

そんな楽天経済圏のここ1年ほどの「改悪」を振り返ってみよう。

 

■強みの「SPU」でも続々……

 

楽天ポイントの優位性を支えているのは、グループの各サービスを使えば使うほどポイント倍率が上昇する「SPU(スーパーポイントアッププログラム)」だ。楽天市場アプリから決済するだけで「SPU+0.5倍」を獲得できていたが、ユーザーにとって最も達成しやすかったであろうこの特典も今年9月に廃止された。

 

次のケースは、ポイント付与上限の「改悪」だ。楽天ブックス(実書籍)と楽天Kobo(電子書籍)で1回1000円以上の買い物をすれば、「SPU+0.5倍」の特典を受けられる。もともと会員ランクによって最大1万5000ポイントを獲得できたが、今年2月以降はいずれのランクも上限が一律1000ポイントまで引き下げられた。月20万円以上の買い物をするユーザーに影響した。

 

もっと分かりやすい「改悪」は昨年9月。楽天会員ニュースの購読者なら誕生日月に会員ランクに応じて100~700ポイントをもらえていたが、なくなっている。

 

条件達成の難易度が上がった「改悪」もある。楽天銀行の口座で楽天カード利用代金を引き落とすだけで受けられた「SPU+1倍」の特典は昨年7月以降、さらに購買の前月に楽天銀行で給与・賞与・年金を受け取ならいと達成できなくなった。会員ランクに応じて獲得できる月間ポイントの上限も、最大15000から一律5000にダウンした。

 

■元凶は楽天モバイルの不振?

 

相次ぐ「改悪」の元凶は、「楽天モバイルの不振」との指摘もアナリストから上がる。

 

楽天グループが発表した2023年6月中間決算(国際会計基準)は、純損益が1399億円の赤字だった。1778億円の赤字だった前年同期から赤字幅は縮小したものの、中間期の赤字は4年連続だ。基地局整備の初期投資が重荷のモバイル事業が足を引っ張っている。

 

楽天モバイルは電波がつながりやすい周波数帯「プラチナバンド」を獲得すべく、総務省に割り当てを申請して起死回生を図っている。これで「改悪」が止まればいいが……。

 

(文:笹川賢一)

出典元:

WEB女性自身

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