病院や学校などでよく見かける“天井の模様”がSNS上で注目を集めている。
Xであるユーザーが、天井の写真とともに、病院の患者が天井を指差して「虫がいる」「血がついている」などと話すと投稿し、なぜ無地の天井にしないのかと疑問を投げかけたところ、各々の見解でコメント欄が溢れた。
その天井は“トラバーチン模様”と呼ばれるもので、不規則に虫食いの穴が開いたようなデザインのものだ。意識して見ると至る所で使われていて、これまで気づかなかったが、弊社の編集部の天井も“トラバーチン模様”だった。
“トラバーチン模様”の天井材を扱う、大手建材会社の吉野石膏の担当者に話を聞いた。
「“トラバーチン模様”の“トラバーチン”とは、もともとは大理石の一種である天然石です。ヨーロッパなどでは昔から建物に使われるなど高級感のある大理石の模様で、それに似せた柄というのが“トラバーチン模様”になっています。
弊社で扱う“ジプトーン・ライト”という商品がありますが、 表面にそういった模様が施された石膏ボードになっておりまして、病院やオフィスのほかにも、多くのコンビニエンスストアや、家具・インテリアの大型小売店さんなどの天井でも使われています」
確かにこの“ジプトーン・ライト”の模様は様々な商業施設で目にする。ここまで広く普及しているのにはどんな理由があるのだろうか。
「単純に、表面にそういった模様が施されている天井材の中で、非常にお安い価格で提供させていただいているという点で、広く使われていると思います。では、なぜ模様がついているかというと、石膏ボードを天井に留める際に打つビスを目立ちにくくするためです。真っ白い面材のままですとビスの頭が目立つので、目立ちにくくする効果を持たせるために、トラバーチンに似せた模様を施しているというのが理由です」
Xでは、この「ビスが目立たない」の理由のほかに「穴の表面積の分、吸音性が高く防音効果がある」などの推理が多く上がっていたが、ジプトーン・ライトの場合、穴自体に防音効果はないという。
「そこがよく混同される部分なのですが、“ジプトーン・ライト”には吸音の性能は特についていません。違う種類の商品で、同じような柄でもロックウールを使った吸音タイプのものや、基準をクリアした不燃タイプのものなどもありますが、虫食い模様のもともとのメリットは“ビスが目立たない”に尽きます。
大理石に似せて見た目もちょっとおしゃれで、ビスが目立たず施工が簡単で、価格が手頃というのが、ここまで普及した理由かなというところです。発売から50年近く、半世紀近く同じものを売っていますが、すごく単純な理由で普及したということです」
よく見るあの天井、普及の裏には大きなメリットがあったのだ。