「女性は40歳をすぎると、体のあちこちに不調が出やすくなります。しかし、いざ受診するとなると、何科に行けばいいのか迷う人も少なくありません。大きな病院をいくつも回って検査を受けたけど、原因がわからず不調も治らない。悩みに悩んだ結果、うちに駆け込んでくる患者さんもいます」
そう話すのは、ローズペインクリニック(愛媛県松山市)の院長、亀井倫子先生。このような経験をしたことのある読者の方も、少なからずいるだろう。こうした事態に陥らないために、持っておきたいのが信頼できる“かかりつけ医”だ。
かかりつけ医とは、予防も含めてふだんから体の不調について、なんでも相談できる医師のこと。
そこで本誌は、女医50人にアンケートを実施。“かかりつけ医”を持つメリットを聞いた。アンケートの結果は次のとおり。
【早期発見】
何でも相談できる医師がいると、疾患が重症化する前に発見できる。
【治療で遠回りしない】
あちこち受診していると、検査・投薬が重複するとこがある。
【医療費が安くすむ】
専門医は限られた病気しか診ないが、かかりつけ医が総合的に診療したほうが、治療もスムーズにでき医療費が安くすむことも。
【再発予防効果】
その人の性格や認知傾向などを把握して診断すると、病気予防だけでなく再発予防効果も。
【病気の悪化を防ぐ】
ある病気の治療がほかの病気に悪影響を与えてしまうことがあり、総合的に判断する必要があるため、全身の状態をきちんと把握しているかかりつけ医の存在が重要。
【その他】
家族関係、趣味、仕事など、患者の情報を細かに知っているほど治療に役に立つので、かかりつけ医を持つことは大事。手に負えないときは適切な治療をしてくれる専門医を紹介してくれる。
アンケートに記入してくれた医師の意見を総合的に考えると、かかりつけ医を持つことで、いくつものメリットがあることがわかる。
■病気の早期発見につながる
「めまいで耳鼻科を受診したけど耳には異常がないといわれ、今度は頭痛で脳神経外科に行きMRIをとったけど異常はなく、結果、悩んだあげく当院を受診されるような方がいます。ほかにも精神科に長くかかって薬をたくさん飲んだけどよくならない方もいらっしゃいました。その方の不調はビタミンや亜鉛、鉄などの栄養素不足が原因でした」
亀井先生はこう話す。
「専門医では各臓器は調べられますが、検査結果に異常がない場合、それで診察が終了してしまうことがあります。かかりつけ医のように、総合的に判断して原因を突き止めることをしないことがままあります。結果、診断が遅れ、患者さんがつらい思いをします」
また、みやさきクリニック(兵庫県尼崎市)の副院長、宮嵜美津穂先生は、こんな発見をしたこともあった。
「以前の勤務先に、長年通っている年配の患者さんが、短期的に何度も『点眼がもうなくなった』と言って来院されたのです。疑問に思ったスタッフがご家族に連絡して調べてもらったところ、認知症であることがわかりました」
日々患者の様子を診ているからこそ、できる発見だ。
■検査や投薬の重複が避けられ、医療費も安くすむ
「かかりつけ医を持たず、さまざまな病院を渡り歩いていると、治療の経過がわかりづらくなり、検査や投薬が重複してムダになることがあります。コストを考えてもかかりつけ医を持つことは大切」(宮嵜先生)
経過が思わしくないと、あちこちドクターショッピングして遠回りしてしまう。しかし、そうなる前に、きちんとかかりつけ医に相談し、紹介状を書いてもらうこと。そうすれば治療の経緯や、これまでの検査結果がわかり、無駄な検査や治療が避けられる。
アンケートに答えてくれた医師自身はかかりつけ医として、どう患者に接するのが望ましいと考えているのか。
「患者さん自身がどのような人生を送ってきて、どんな性格をしているか。物事に対してどのようにとらえ行動するのかを把握する姿勢が重要です」
こう答えた医師は、患者を知ろうという姿勢が病気を治すことだけでなく、再発予防にもつながる診療が可能になるという。
「頼れるかかりつけ医を持っていると、患者の状況に応じて、いちばんいい治療が受けられる専門医を紹介してくれます」
と話すのは、女性クリニックWe! TOYAMA(富山県富山市)の医師、濱田えりか先生。
「紹介状を持たずに大病院に行くと、初診料が病院によっては5,000円以上かかります。また、研修医がいるような大病院だと、まだ深刻な病気でない場合、若手が担当になってしまう可能性も。大きな病院に行ったために主治医のレベルが低くなってしまうこともあります」
かかりつけ医に選別してもらった医師を、紹介してもらったほうがよさそうだ。