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4月4日、京都府舞鶴市で行われた大相撲春巡業で、土俵上で倒れた男性の救命措置を施した女性に、行司が「女性の方は下りてください」とアナウンスしたことについて、怒りの声は高まるばかりだ。

 

さらに8日、静岡市駿河区に開かれた春巡業でも、力士が土俵で子どもに稽古をつける「ちびっこ相撲」に参加予定だった小学生の女の子が、日本相撲協会からの要請で土俵に上がれなかったことが判明した。

 

「江戸時代から親しまれている大相撲ですが、『土俵は女人禁制である』と取りざたされたのは、じつは’70年代、子供相撲の女子代表が国技館の土俵に上がれず、参加を拒否されたことからです。その後、森山眞弓元官房長官、太田房江元大阪府知事らが、表彰のために土俵に上がることを拒否されて以降、問題が表面化しています」

 

こう語るのは、文化人類学が専門の慶應義塾大学名誉教授の鈴木正崇さんだ。女人禁制は土俵だけではない。女人禁制が“伝統”とされてきた場所はまだまだある。

 

「信仰や修業の場であった霊山、たとえば今では女性に人気の高尾山や富士山も、かつては『女人結界』が設けられ、女性が立ち入ることを禁じていました。山には神が宿るとされ、トンネルを掘る工事現場にも、女性が立ち入ることは近年までなかったとされています」(鈴木さん)

 

日本の多くの山々から「女人結界」が解除される大きなきっかけとなったのは、明治5年、明治政府による通達だ。

 

「同年、京都で博覧会が開催されるため、外国からの訪問者が妻同伴で比叡山などを観光すると予想されました。文明開化を推し進めているのに、西洋から“遅れている”と思われたくない政府が、女人結界の解禁を進めたのでしょう。それほど慎重な議論があったとは思えません」

 

このように近代化に向けて変化した伝統もあるが、いまだに女人禁制とされている山、島もある。

 

「代表的なのは、沖ノ島(福岡県)や大峰山の山上ヶ岳(奈良県)など。大峰山は’04年にユネスコの世界遺産に登録され、その前に抗議運動が起こりました。しかし禁制を解除する動きはあり、’00年に解除が検討されていましたが、’99年、『女人禁制は女性差別』と訴えるグループが、強行登山を行い、地元住民の感情を逆なでしたので理解を得られませんでした。沖ノ島は、現在でも島全体が女人禁制で、男性でも儀式をしてからでないと上陸できません」

 

山と同じように、海も“異界”であり、神のいる聖域と捉えられていた。

 

「漁に出るのは男だけ。女性は漁船に乗れなかった時代がありました。でも、山の神様は女性ですし、そして船の守り神様も、女性なんですよ」

 

自然界ばかりではなく、日本酒の製造場も、神が宿るといわれている。

 

「麹の出来具合で、酒の品質が左右されます。その偶然性を人々は神意と捉えていたためでしょう。いまでも酒樽にしめ縄を巻くことがその証拠です。女性杜氏も増えてはきましたが、かつては男性ばかりの世界でした」

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