「山崎製パンや敷島製パンなど、大手パンメーカーが、パンの出荷価格を、7月から引き上げる」

 

そう報じられたのは6月上旬のこと。その背景には、原料となる小麦価格の値上げがある。第一生命経済研究所の首席エコノミストの永濱利廣さんはこう解説する。

 

「日本で消費されている小麦粉の約9割は輸入小麦から作られています。輸入小麦は日本政府によって買い付けられ、国内の製粉会社に売りわたされる仕組み。価格は国際相場や為替相場から、政府が決めています。政府が小麦の価格を引き上げたことを受けて、製粉大手各社は小麦粉を値上げしたのです」

 

業務用の小麦粉はすでに6月20日に値上げが行われ、家庭用のものも7月から値上げされる予定だ。小麦粉とパンの値上げ幅はいずれも1~5%。3人家族の場合で、年間1,000円程度の負担増となる。

 

「もともと安いものなので、家計にはほとんど影響はないでしょう。うどん店やお好み焼き店など、小麦粉を多く扱う外食産業も、そこまでの負担増ではないので、値段を上げることはないと考えられます」(家計の見直し相談センターのFP・藤川太さん)

 

だが、パン以外も、今後多くの食品や日用品の値上げが懸念されるというのは、前出の永濱さんだ。

 

「小麦の値上げの理由のひとつが、原油高でした。穀物を作ったり、輸送するのには燃料が必要です。また、原油高をカバーするためにバイオ燃料を使う流れができる。その原料となる小麦の需要が増えるので、相場が上がるのです」(永濱さん・以下同)

 

現在、原油価格は1バレル65ドル前後。昨年の6月は45ドル前後だったから、1.5倍近くに上昇したことになる。

 

「原油高というのは生活に欠かせないほぼすべてのものに影響を与えてしまいます。すでにこの影響は出始めています。たとえば、クリーニング会社最大手の白洋舎は6月から一部の料金を値上げしました。洗剤などに石油製品を使っているためです。また、地域によっては電気料金やガス料金も値上げされます」

 

さらに航空業界では8月に国際線の燃油サーチャージ代が上がる予定だ。船を動かすのに多くの燃料を必要とする漁業への影響も懸念される。

 

「原油高になれば、ガソリンなどの燃料代はすぐに上がりますが、ほかのものは約半年ぐらいのタイムラグがあります。今後、ビニールや食品トレー、化学繊維などが原油高の影響を受けるでしょう。さらに、燃料コストが上がることで、宅配便などの運送料が値上げされる可能性もあります」

 

原油高になっている理由は世界経済が好調であることや、複雑な中東情勢が背景にあるという。

 

「タイムラグがあるので、仮に原油価格が下がっても、すぐに物価が下がるわけではありません。それに、一度、値上げしたものを値下げするのは難しいことです。仮に小麦粉が安くなっても、一度上がったパンの価格は下がらないでしょう。逆に、次に小麦が高騰したら、また値上げになる可能性も。パン以外のものも、価格が緩やかに上がることを覚悟したほうがいいですね」

 

主婦にとって厳しい時代が始まりそうだ。

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