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新型コロナの新規感染者数は微妙に増加傾向ですが、そろそろ「全国旅行支援」が始まりそうです。遠距離旅行もついに解禁され、割引があってお得な制度ですが、いっぽうで、旅行者向けの新税を導入する自治体が増えています。そんな旅行者向け“新税”について、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれましたーー。

 

■少額のチリツモ税こそわかりやすい使い道を

 

もっとも早く導入したのは東京都です。’02年に、食事などを除いた素泊まりの宿泊費が1万〜1万5000円なら100円、1万5000円以上なら200円という「宿泊税」が導入されました。

 

次いで’17年から大阪府、’18年から京都市。京都市は高めで、宿泊費2万円未満で200円、2万〜5万円が500円、5万円以上は1000円です。また、’19年4月から金沢市も、と導入が相次ぎました。

 

’20年4月からは、福岡県と福岡市、北九州市が「宿泊税」を設定しました。たとえば福岡市に宿泊すると、宿泊費が2万円未満なら「宿泊税」は200円ですが、そのうち50円は県の、150円は市の取り分などと分けるようです。

 

変わり種としては、東シナ海にある離島の沖縄県座間味村。’18年4月から飛行機や船で入村するたびに1人100円の「美ら島税」が徴収されます。観光客だけでなく、ほかの町へ行き来する住民も同額を払わねばなりません。

 

さらに今後は’23年4月から長崎市で「宿泊税」、’23年秋から広島県廿日市市で世界遺産の安芸の宮島を訪れる際に「宮島訪問税」、’24年に沖縄県宮古島市では「宿泊税」の導入が予定されています。

 

「宿泊税」などはおもに観光地の環境整備や魅力向上のために活用されるようですが、皆さんはどう思いますか。「数百円だから、まあいいか」「観光地の整備のためなら仕方ない」など、協力的な方が多いでしょうか。

 

しかし、いつの間にか新しく設定される税金は、宿泊関連だけではありません。総務大臣の同意を得て自治体が独自に設定する税金は、静岡県熱海市の「別荘等所有税」、福岡県太宰府市の一時有料駐車場を利用するとかかる「歴史と文化の環境税」、山梨県富士河口湖町の釣り客が払う「遊漁税」など多種多様です。

 

地方税にも、温泉で「入湯税」、ゴルフ場で「ゴルフ場利用税」、「たばこ税」などがあります。

 

これらはどれも数百〜1000円程度と少額です。いくつも重なると負担は重くなりますが、利用料金などと一緒に払うので、納税の感覚があまりないのかも。

 

ただ給料が上がらず物価が上がる今、こうしたチリツモが手痛いのです。せっかく払うのなら、せめて使い道などをわかりやすく明示してほしいものです。

 

また、森林整備のための「森林環境税」はすでに県などで徴収している地域もあるのに、’24年度から1世帯1000円の国税として導入が決まっています。国と県が同じ目的で重ねて課税するのはいかがなものか。税体系の抜本的な見直しが必要ではないでしょうか。

 

【PROFILE】

荻原博子

身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある

経済ジャーナリスト

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