風の谷の熱血園長 親子の体温、子供の責任感を信念に理想の幼児教育を根付かせた25年の奮闘
画像を見る 天野園長の掛け声で始まった風の谷名物「梅もぎ」。梅ジュース作りまで子供たちが自ら行う

 

■決していい母親ではなかったけれど、母親の背中を見ていた息子たちはしっかり育って

 

「偉そうに言ってるけど、私、けっしていい母親じゃなかった。長男が小学校高学年のころに体調をくずしたとき、『32人の子供たちが待っているから』と言い聞かせて、息子を残し病院から園に戻ったことがありました。

 

あとで知るのは、一人帰宅した長男は、途中のゴミ箱に吐いてしまったと。

 

本当に申し訳なかったと思うけれども、私は、けっして息子をほったらかしにしていたわけじゃないの。『お前たちも我慢してね』ときちんと事情を話すことは徹底していた。だから、息子たちも、今日までずっと私の仕事を応援してくれたのだと思います」

 

寝食を忘れ園児のために奮闘する母親の背中を、息子さんたちはしっかり見ていたのだろう。きちんと相手と向き合い対話する姿勢は、風の谷の基本に通じる。

 

「うちの孫たち4人も、風の谷育ちなのよ」

 

しっかり者の園長から、やさしいおばあちゃんの顔になって、うれしそうに笑うのだった。

 

この9月で喜寿を迎える天野園長だが、まだまだ現場で学ぶことも多いと語る。

 

「60歳過ぎてから両足の股関節は人工関節だし、背中には大きな湿布が2枚(笑)。

 

ひどいめまいも医者からは『頭の回しすぎ』と言われますが、もう朝起きたときから、今日は砂場は暑すぎるかな、どこで休憩を入れようかと考えてる。まあ、私は子供中毒だね」

 

猛暑が続いたこの夏。風の谷の子供たちは、自作の梅ジュースのおかげで、みんなが元気に夏を乗り切ることができた。

 

※風の谷幼稚園の長編ドキュメンタリー映画『時代遅れの最先端』(五十嵐匠監督)は10月に東京の「ポレポレ東中野」にて上映予定

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