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緊急搬送された患者のデータなどから医学統計の専門家が分析。その結果わかった「血液型によってかかりやすい危険な病気」を知り、日常生活から予防の意識を高めようーー。

 

日本では、血液型占いが盛んなため、身近な「ABO式血液型」だが、世界の医学者が血液型と病気の関係性について注目したのはつい最近のこと。

 

「血液型というのは、医学的にはRh(+)(−)のほか、100種類以上の分類があります。そのなかでABO式は歴史が古く1900年にウィーンで発見されました」

 

こう話すのは、世界中の血液型と病気に関わる文献を収集、研究している永田宏先生(長浜バイオ大学教授・以下、コメントはすべて永田先生)。

 

じつは、それまで、人の血液はすべて同じだと考えられてきた。それが医学の進歩で輸血が試みられるようになり、混ぜると固まってしまう血液と、固まらずに輸血に使える血液があることがわかってきたという。

 

「血液が固まるのは赤血球が凝集するせいです。人には、すべての血液と凝集しないO型。AとOとが凝集しないA型。BとOとは凝集しないB型。AとB両方と凝集してしまうAB型の4パターンがあることがわかったのです」

 

永田先生が血液型と病気リスクの関連性について研究を始めたのは、あるメディアから「医療保険に加入する際に、血液型の告知は必要か?」という質問を受けたことがきっかけだという。

 

「調べてみると、現在、保険の告知に血液型は必要ありませんでしたが、2000年代になってから、世界各国で大規模調査が行われ、血液型と特定の病気のリスクの関係性が次第に明らかになってきたのです。近年、病気のカルテの電子化が進み、データ分析しやすくなったことも、多くのデータ収集が行われるようになった一因でしょう」

 

すべて統計的なデータの裏付けはあるが、理由までは解明されていないものも多いとか。永田先生の解説で、血液型別なりやすい病気を解説してもらった。

 

■A型がなりやすい病気「胃がん、心筋梗塞」

 

「’10年、スウェーデンの研究チームが100万人を対象に35年間のデータを集め、A型はO型に比べ、1.2倍、胃がんになるリスクが高いと報告しました」

 

そのデータの表を見ると、じつはAB型のほうが1.26倍で、A型よりリスクが高いことになっているが、スウェーデンではAB型が極端に少ないため、リスク評価基準を満たしていないという見地から、A型のリスクが重要視されているという。

 

「’11年に、日本の研究チームも703人の胃がん患者を調べたところ、やはりA型がもっとも罹患しやすいと結果が出ています」

 

もうひとつ、気がかりなのが、心筋梗塞など、血栓(血液の固まり)が、心臓や脳の血管に詰まりやすいリスクだ。

 

「O型に比べ、ほかの血液型は血が固まりやすい分、血栓ができやすい傾向があります。とくにA型の場合は、’12年に台湾で行われた研究で、ほかの血液型に比べ、心筋梗塞になりやすいとのデータが示されています」

 

■B型がなりやすい病気「すい臓がん、糖尿病」

 

「’09年、米国の国立がん研究所の調査では、すい臓がんにもっともなりやすいのはB型でした」

 

その理由はまだ明らかになっていないが、人の遺伝子配列で、血液型を決める遺伝子と、がんのリスクを左右するDNAが隣り合っていることが、なんらかの影響を与えているのではないかとする研究が進められているとか。

 

また糖尿病に関しては、’14年にフランスで8万人の女性を対象にしたデータで、O型に比べ、B型で1.21倍かかりやすいというリスクが示されている。

 

■O型がなりやすい病気「胃・十二指腸潰瘍、重大事故による死亡率」

 

ほかの血液型に比べ、血が固まりにくい傾向があるO型。このため、重大事故の際の死に至るリスクが高い。

 

「ほかには、胃・十二指腸潰瘍などのリスクをO型を1とすると、A型0.81、B型0.74、AB型0.64と、圧倒的にO型がなりやすい(’10年。スウェーデン調査)」

 

’04年に、O型の血液を好むピロリ菌が発見されており、ピロリ菌は胃潰瘍の原因のひとつとされるため、その関係性が注目されているという。

 

■AB型がなりやすい病気「脳卒中、認知障害、エコノミー症候群」

 

「世界的に少ない血液型なので、統計的なデータが不足していることはいなめませんが、4つの血液型の中で、もっとも血液が固まりやすいことが指摘されています。このため、エコノミー症候群(肺塞栓症)については、もっともリスクが低いO型に比べ、リスクが2倍。また’14年の米国で3万人を対象とした脳梗塞の患者の調査では、O型の1.83倍、リスクが高かったという報告がされていますから要注意です」

 

同じ米国の認知障害の調査では、O型を1とした場合、A型もB型もO型と変わらなかったが、AB型だけが1.82倍リスクも高くなったとの報告もされている。

 

こうした血液型別の傾向について、永田先生は、こう語る。

 

「現段階では、治療現場で応用できるほどの差異ではありませんが、自分の血液型がなりやすい病気の傾向を知ることで、意識的に検診を受けるなど、早期発見、早期治療につなげてほしいですね」

 

あなたも血液型の病気のリスクをよく理解して、自分の健康維持に役立ててほしい。

 

「女性自身」2021年1月5日・12日合併号 掲載

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