「外来でも保育園児や小学校低学年児童を中心に、ノロウイルスの感染による胃腸炎が増えている感触です」と語るのは、新宿や立川などに展開するナビタスクリニックの内科医・久住英二さん。
12月14日の毎日新聞「医療プレミア」でも《国立感染症研究所によると、全国約3,000カ所の小児科から報告された感染性胃腸炎の患者数は11月28日から12月4日の1週間で5万4,876人となり、昨年同期の約3倍になっている。このうち3〜5割がノロウイルスが原因とみられるという》と報じている。久住さんが続ける。
「例年、10月〜3月に流行します。ひと口にノロウイルスといっても、さまざまな型があり、今年、多いのは『G2.2』。しばらく、はやっていない型なので、小さいお子さんには免疫がない。そのため、感染者が増えているとみられています」
症状は下痢と嘔吐。潜伏期間は1日から3日だが、突然、症状が現れるのが特徴だという。
「徐々に体調の変化が出てくれば“今日は調子が悪そうだ”と学校を休ませることができますが、朝、元気で学校に送りだしても、2時間目になって急に教室で吐いてしまったりします」(久住さん・以下同)
こうした感染者の嘔吐物や便が感染源となる。
「嘔吐物はきれいに拭き取ったつもりでも、カーペットなどでは拭き残しが出ます。10日ほどウイルスは生きているので、それが乾いて埃となったものを吸い込むと、感染の原因になります。“ノロ”は少ないウイルス数でも感染しやすいのが特徴ともいえます」
下痢にしても、和式のトイレを使用した際、目に見えなくてもズボンの裾についてしまうという。
「それが乾いて空気中に浮遊することもありますし、お尻を拭くときに手についてしまったら、洗面所の蛇口やトイレのドアノブにも付着します。実は電車のつり革や手すりなどにも、普通にノロウイルスはあるのです」
完全に感染を防ぐことは難しそうだが、個人でできる対策はあるという。そんな個人でできるノロウイルス対策は、1.ふだんから体調管理を。2.帰宅時だけでなく、食事前にも入念な手洗いを。3.食材は85〜90度で1分半以上加熱するとノロウイルスは死滅。4.嘔吐物などの掃除は、次亜塩素酸ナトリウムが成分の洗剤を。5.体力のある成人なら自宅静養で十分(だだし脱水状態には要注意)の5つだ。
「免疫がある人も、ノロウイルスに強い体質の人も、体力がなければ感染リスクが高まるので、体調管理をしておくことが大事です。手洗いですが、家に帰ったときだけでなく、食事前にも心がけましょう。入念な手洗いで、ノロウイルスの数を100分の1〜1,000分の1に減らすことができます。ノロウイルスは85〜90度で1分半以上加熱すれば死滅しますので、調理の際は考慮してみてください。また、アルコール消毒はあまり効果がないといわれています。嘔吐物を掃除するときやドアノブを拭く場合は、次亜塩素酸ナトリウムが含まれている洗剤などが効果的。ただし、漂白剤なので絨毯などが傷んでしまうことがあり、注意が必要」