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かつて高い資産価値を誇っていたはずの不動産も、近年では少子化による「家余り」で売るに売れない「負動産」になるケースが増えているという。「不動産」ならぬ「負動産」とはなんだろう。

 

「一般的に負動産とは、『持っているだけで資産的にマイナスになる不動産』のことを指します。もっともイメージしやすいのは、地方にある戸建ての空き家でしょうか。もともと住んでいた親は亡くなったものの、売却もできず子どもが固定資産税を払い続けているような状態は、負動産の典型例です。また、それに限らず『いまよりも価値が下がっていく不動産』も、大きな枠で負動産に該当すると私は考えています」

 

そう語るのは、負動産問題の専門家で、相続・不動産コンサルタントの藤戸康雄さん。すでに国内にある「所有者不明」の土地は九州の面積を超す広さに達しているが、藤戸さんは「今後はさらに、マンションも含めた負動産が大幅に増加していくでしょう」と警鐘を鳴らす。

 

具体的に負動産になりやすい物件とはなんだろう。「地方の戸建て」がその典型例というのは冒頭のとおりだが、「そのマイナス面は、資産価値に乏しいことや固定資産税がかかることだけに限りません」と藤戸さん。

 

「木造家屋は湿気に弱く、人が住まなくなると1年足らずで朽ち始めてしまうことも。『特定空家』にならないためには、定期的なメンテナンスが必要です。年に数回、誰も住まない実家の手入れをしに行くというのはよくある話。遠隔地であれば交通費だけでもかなりの出費になりますし、地元の不動産業者に管理を頼めば月々の手数料も発生します」

 

そのほか負動産の典型として藤戸さんが挙げるのが、「老朽化した分譲マンション」と「別荘・リゾートマンション」だ。

 

「高度経済成長時代に大量供給された分譲団地タイプのマンションは老朽化が進み、建て替え問題が発生しています」

 

しかしマンションの場合、一つの建物を複数の権利者で共有する「区分所有」が一般的。

 

「建て替えには原則的に所有者および議決権の5分の4の賛成が必要ですが、入居者の高齢化もあって実現しづらいのが現状です。では、建物を解体して敷地を売却してはどうかというと、こちらは原則全員の同意が必要で、さらにハードルが上がります」

 

こうした物件を相続すれば、売却もままならず困惑する羽目に。さらに相続後に大規模修繕が発生し、数百万円単位の拠出を求められることもありうるという。

 

「別荘については、外国人に人気の一部の場所以外は、過疎地の戸建てと似たような状況です。バブル時代に乱立したリゾートマンションは、価格が暴落しているいっぽうで、温泉など豪華な共用施設にかかる管理費は非常に高額になります。まさに、所有しているだけでお金だけが出ていく負動産です」

 

つづいて藤戸さんが「近い将来、負動産の主流になるのでは」と予測するのが、老親が経営しているアパートだ。

 

「’15年の相続税法改正前に、ハウスメーカーや銀行が『相続税対策』とはやしたてた結果、地方でも古くなった自宅を建て替えてアパートにする人が急増しました。しかし人口は減少しているので、すでに空家率は激増しているというデータもあります。このままでは家賃収入が減るばかりか、アパートを建設したときの借金が返済できなくなる可能性も」

 

さらには開発がつづく都心のタワーマンションですら、将来的には負動産になる可能性を秘めているという。

 

「だいたいマンションは12年に1回程度で大規模修繕を行いますが、3回目の大規模修繕を迎えるころには老朽化によって修繕費は大幅に上がる傾向に。東京の広尾や恵比寿など、よほどいい立地ではない限り資産価値が維持できず、老朽化マンションと似た道をたどると予想されます」

 

最後に、盲点なのが都市部の農地だ。

 

「’92年に『生産緑地法』が改正され、主に大都市圏の市街化区域にある農地は、宅地化を進める農地と、農地として保全する農地(生産緑地)に分けられました。この『生産緑地』に指定されると固定資産税が極めて安くなるなどのメリットがあるのですが、そのいっぽうで30年間は農業を営むことが義務付けられていました。そして、この『生産緑地』の8割が、3年後の’22年に指定から30年目を迎えます。農業を継ぐ人がいなければ固定資産税は跳ね上がりますので、宅地として売却するケースが続出するでしょう。一説によると、東京ドーム2,200個分もの土地が一気に不動産市場に出てくると推測されています」

 

これだけの土地が一気に放出されれば、大都市圏の不動産価格は暴落必至! もはや地方も大都市も戸建てもマンションも関係なく、実家が負動産になりうる時代に突入しているのだ。

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