■グループホームに入居した場合

Dさんは75歳で少しずつ認知症の症状が出はじめた。最初は物忘れ程度のために家族も楽観的に見守っていたが、数年たつと、しだいに脈略なく怒鳴りだしたり、夜、徘徊してしまうように。医師のすすめで介護申請を行い要支援2となった。介護に疲弊した娘夫婦は、認知症に特化した施設であるグループホームへ入居させた。入居後は投薬の効果もあり穏やかな様子であったが、84歳のときに要介護1、90歳では要介護3となった。やがて足腰が弱くなっていき、93歳の誕生日の前日に亡くなった。

 

〈試算〉

・敷金:15万4,000円

 

【80〜83歳】要支援2

・介護費用:2万8,000円
・居住費:11万2,000円
・食費:3万6,000円
・合計(月額):17万6,000円
・年金のみの不足額(月額):4万8,000円

 

【84〜89歳】要介護1

・介護費用:2万9,000円
・居住費:11万2,000円
・食費:3万6,000円
・合計(月額):17万7,000円
・年金のみの不足額(月額):4万9,000円

 

【90〜91歳】要介護3

・介護費用:3万円
・居住費:11万2,000円
・食費:3万6,000円
・合計(月額):17万8,000円
・年金のみの不足額(月額):5万円

 

【92歳】要介護5

・介護費用:3万1,000円
・居住費:11万2,000円
・食費:3万6,000円
・合計(月額):17万9,000円
・年金のみの不足額(月額):5万1,000円

 

◎13年間で779万8,000円不足(総費用2,776万6,000円/年金総額1,996万8,000円)

 

■別々に暮らして在宅介護する場合

 

75歳で夫に先立たれたEさん。家事全般をこなし、近所の娘夫婦から自立して生活していた。ところが79歳のある日、階段から転倒してしまい骨折。娘からは施設への入所も提案されたが、これまで元気が取り柄だったEさんは「いまさら住む場所を変えたくない」と在宅介護にこだわった。手すりを設置するなど、自宅をバリアフリーにリフォームし、訪問介護や通所介護を利用できるよう、計画をケアマネと立てた。死ぬまで歩きたいと、家の中でも積極的に歩いたが、再び転倒し、要介護2に。近くに住む娘の手を借りながら、介護保険のサービスを活用し、家の畳の上で生涯を終えることができた。

 

〈試算〉

・介護リフォーム代:2万円(20万円利用したぶんの自己負担1割)

 

【80〜89歳】要介護1

・介護費用:1万4,000円
・生活費:15万円
・合計(月額):16万4,000円
・年金のみの不足額(月額):3万6,000円

 

【90〜92歳】要介護2

・介護費用:1万5,000円
・生活費:15万円
・合計(月額):16万5,000円
・年金のみの不足額(月額):3万7,000円

 

◎13年間で567万2,000円不足(総費用2,562万円/年金総額1,996万8,000円)

 

在宅でも567万円不足するという結果に。ただし、「今回の試算は総務省が行っている家計調査の平均値を利用しています。Eさんの状態であれば、家計調査にある交際費や娯楽費はもっと低くなり、持ち出しはもう少し小さくなるかもしれません。また持ち家か賃貸かでも大きく変わります」(齋藤さん)

 

「あくまでも概算です。都心部の高齢者施設を利用すれば費用はさらに高くなるし、基礎年金のみの人は厚生年金より受給額が低いので、不足額はより大きくなるでしょう。また、人生100年時代、さらに長く生きるケースも、十分に考えられます」(齋藤さん)

 

もちろん、こうした不足分を、親の貯蓄や、不動産や株式の収入でカバーできればベスト。だが、足りない場合は、子どもたちで負担できるのか、計算しておくことが必要だ。

 

「コロナを理由に、親にエンディングノートを書いてもらうなどして、資産状況を整理しておくといいでしょう」(寺門さん)

 

穏やかに親に旅立ってもらうためにも、現実的な高齢者施設選びを考えよう。

 

「女性自身」2021年1月19日・26日合併号 掲載

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