東北・福島にようやく訪れた春。桜のつぼみが今にも弾けそうな穏やかな日に、ピッカピカに輝くランドセルをゆらして学舎に入っていくのは、瀬尾悠月ちゃんと三瓶晴奈ちゃん。この4月に、浪江町立浪江小学校に入学した2人の新1年生だ。

 

東京電力福島第一原発事故で全町避難が続く浪江町。震災前は558人の児童が元気な声をあげていた浪江小学校も臨時休業に。福島県二本松市の廃校となった校舎を利用して‘11年に開校したが、現在、全校生徒17人(浪江町立津島小学校の児童3人も同じ校舎で学ぶ)に。先生や上級生だけでなく、町民にとっても待ちに待った2年ぶりの1年生だ。

 

「避難所、仮設住宅暮らしと子供には大変な思いをさせましたが、娘が小学生になった姿を見て、また僕も頑張ろうと思いました。故郷を忘れてほしくないと思い、自宅近くの小学校ではなく、浪江小学校に入れたかったんです」

 

こう語るのは娘の晴れ姿に目を細める、悠月ちゃんの父・文昭さん。晴奈ちゃんの母・忍さんも、次のように話していた。

 

「山も川も海もある自然豊かな浪江のことは、忘れてほしくないから、よく娘に話しています。新入生が2人と聞いて少し戸惑いましたが、先生の目が行き届くので逆にいいかなと。それに主人の母校である“地元”の小学校に入れたかったんです」

 

入学式を終え、担任の先生から「すぐに動物園に行く遠足があるんだよ」と知らされると、目をキラキラさせた2人。最初の登校日が終わったころにはすっかり仲よくなり、おともだちになっていた。

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