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「首都直下型大地震の前触れか」と思わせるような地震が、首都圏で頻発している。マグニチュード5クラス以上に限っていえば、7月17日(震源は茨城県南部)、19日(同千葉県東方沖)、20日(同茨城県南部)と、連続して起こっている。これは、首都圏を襲う巨大地震の“予兆”なのか。ふたりの専門家に話を聞いた。

 

「首都圏は、マグニチュード7クラスの地震がいつ起きてもおかしくありません。もともとこの地域は“地震の巣”ですから」

 

そう話すのは、武蔵野学院大学特任教授で地球物理学者の島村英紀氏。“地震の巣”とは、どういうことか。

 

「首都圏全体が、地球の表面を覆う岩盤の一部である、北アメリカプレートの上に乗っています。東からは太平洋プレートが、南からはフィリピン海プレートが入り込んでいて、いつも押し合っている状態です。これに加えて千葉・神奈川・さいたまなどには、いくつもの活断層があって、世界でも類を見ないほど、地震が頻発しやすい地形なんです」(島村氏)

 

だが、なぜか1923年に関東大震災が起きて以降、首都圏では大きな揺れがパタリと止まっていた。それが「11年に起きた東日本大震災を境に再び動き始めた」と島村氏は指摘する。では、具体的に首都圏のどの場所が危ないのだろうか。

 

「この次、どこで起きると明確に指摘することはできません。ただ可能性が高いのは、神奈川県の相模湾にある相模トラフです」(島村氏)

 

トラフとは「溝」のこと。プレートとプレートが押し合ってパワーが集中する場所だ。地震には、大きく分けて活断層などが原因となって起こる「直下型」に加え、海底でのプレートの押し合いで起こる「海溝型」の2種類がある。相模湾で起こる地震は、後者の「海溝型」。東日本大震災と同じだ。

 

相模トラフは藤沢や鎌倉などの目と鼻の先にあるので、直下型に近いタテ揺れも強くなり、被害が甚大になる可能性が指摘されている。1923年に起きた関東大震災(マグニチュード7.9)も、相模湾北部を震源とする海溝型地震。死者・行方不明者は10万人にものぼった。

 

数々の地震予知を的中させてきた電気通信大学名誉教授の早川正士氏は、他の地域のリスクについても、こう語る。

 

「1週間先の短期的な予知なら可能です。気をつけてほしいのは、沖縄や小笠原諸島などの南方沖と、岩手県などの太平洋沖です」

 

早川氏は地震の前兆現象をとらえて、地震予知を行ってきた第一人者だ。その地震予知のメカニズムはこうだ。

 

「たとえば木製の割り箸を折り曲げていくと、パチパチとしなり始め最終的にはバチッと割れますよね。このとき割り箸には、摩擦による電気が起こっているんです。地震も同様で、プレートなどに圧力がかかると必ず電気が生じる。これを電磁気現象と呼ぶのですが、この電磁気現象が起きるのが地震の約1週間前。我々はこれを電波でキャッチして、地震予知に活かしています」

 

そう話す早川氏も、島村氏と同様に、東京や神奈川など、南関東での地震のリスクを指摘している。

 

「南関東では、平均28.3年に一度、マグニチュード7クラスの地震が起こっています。直近では、87年に千葉の東方沖でマグニチュード6.7の地震がありましたが、すでに25年経ちました。ここ1週間(注・取材日の7月22日時点から)のうちに関東周辺で大きな地震が起こる可能性は低いが、その先は、いつおこってもおかしくない状態であることは間違いありません」(早川氏)

 

地震被害を最小限にとどめるにはどうすればいいのか。早川氏はこうアドバイスしてくれた。

 

「地震の危険性が出てきたら、できるだけ地下街や地下鉄を使わないこと。家事のリスクも高まるので、引火しやすい化学繊維素材の服は着ないように」

 

食糧の備蓄や家具の固定などの基本的な備えをするのは当然。今からで遅くはない。「いつきてもおかしくない」地震に向けて、家族総出で対策をしよう。

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