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<初春の令月にして、気淑く風和ぎ――>

 

新元号「令和」は、日本最古の歌集『万葉集』の「梅花の宴」の漢文で書かれた序文から採用された。『万葉集』に詳しい上野誠・奈良大学教授が解説する。

 

「よい月に天気がよく、風が柔らかに頬をなでるような、なんともよい日に親しい友と宴をする――。730年正月13日、九州・太宰府で『万葉集』の編纂者の1人、大伴家持の父である大伴旅人の邸宅で催された梅の花見の宴。そこに集まった32人の歌人が、当時は中国からの外来植物だった梅の木を囲んで和歌を詠み合いました」

 

新元号には深い意味が込められていると上野先生が続ける。

 

「新しい時代は、金や名誉ではなく、よきときに、よき友と宴を共にするような穏やかなひとときが人間にとって幸せであってほしいという、考案した方の願いがあると考えています。『令和』には、この2文字を選んだ方の平和を希求する心が表れているのです」

 

5月1日から令和元年が始まる。しかし、まだこの元号に愛着を感じられない人も多いはず……。

 

「最初に『令和』と聞いた瞬間は、意外な感じがしました。でも、その後に何度か読んでみると、響きもよく、いい元号だなと思うようになりましたね」

 

こう話すのは、元号研究の第一人者で、『元号 全247総覧』(悟空出版)の著者でもある、東京大学史料編纂所の山本博文教授(62)。意外だったその理由は?

 

「“令”というのは、漢文の中では“~させる”といった使役の意味で使われる字なので、これは予想外でしたね。過去に一度も使われたことはなかった字ですから。中国の古典ではなく、初めて日本の古典から元号が選ばれましたが、これが今後の元号選定の新しい流れになるでしょうね」

 

『令和』が発表された翌日には、残りの5候補(『英弘』『広至』『久化』『万和』『万保』)も明らかになった。

 

「江戸時代の『天保』『万治』『弘化』『文久』など、過去によく使われた字が入っているで、『久化』『万保』『万和』には、新しさは感じませんでしたね。逆に『広至』の“広”は0回、“至”は1回だけなので新鮮でした。また『英弘』は、かなり人名でかぶることになるだろうという印象を持ちました」

 

安倍総理の意向が働いた?

 

「日本の古典から候補を出すと決まった時点で、政治的な部分を感じましたが、今回の『万葉集』の文章には、政治的な部分はありません。そういう意味で、“落としどころ”としてはいい元号だったのではないでしょうか」

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