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「菅義偉首相が進める経済政策の根底には『地方銀行も企業も、怠けているところは強制的にでも変えなければいけない』という考えがあるようです。携帯電話各社に『料金値下げ』を要請したのがいい例で『地銀の再編』もその一環です。全国101行の地方銀行は近い将来、半減するかもしれません」

 

こう話すのは、国の経済政策に詳しい経済評論家の加谷珪一さん。菅首相は、9月の自民党総裁選出馬の段階で「地方の銀行について、将来的には数が多すぎる……再編もひとつの選択肢になる」と発言している。

 

「今後人口が激減する日本は、30年後の’50年に1億人に。つまり2,000万人減る見込みです。すると各地方の人口は都市部に集まっていき、地銀は融資先が激減し経営していけなくなる。小泉政権で、竹中平蔵総務大臣の下、総務副大臣を務めた菅さんは、構造改革路線を復活させるもくろみでしょう」

 

加谷さんによれば「現在の101行から50行程度まで統合する必要がある」というのが専門家の見通しだそうだ。仮に自分が口座を持っている地銀が他行と統合した場合、ふだん利用している支店やATMがなくなることもあるかもしれない。

 

また、地域密着の地銀ならではの、さまざまな相談に乗ってくれる“街の銀行員さん”もいなくなってしまうかもしれない。万が一、破綻すれば、自分が預けていたお金の一部が返ってこないという事態もありえるかも。

 

はたして、どの銀行が統廃合の可能性が高いのか、加谷さんに解説してもらった。

 

「銀行は預金者から集めたお金=金融資産を融資などで運用して利益を得ています。今回は各行の『総資産』に対して、本業などの利益=『コア業務純益』がどれだけ出せているのかを示す数値『コア業務純益率』のワースト1~101を算出しました。全行の平均値は『0.25%』です。各道府県内で複数の地銀が営業している場合、このコア業務純益率が低い地銀ほど消滅してしまう可能性が高いんです」

 

 

【ワースト1】島根銀行(本店所在地・島根県松江市)/グループ・SBI
総資産(百万円)=439,279
コア業務純益(百万円)=-446
総資産コア業務純益率=-0.102%

 

【ワースト2】長崎銀行(本店所在地・長崎県長崎市)/グループ・西日本FH
総資産(百万円)=285,913
コア業務純益(百万円)=-41
総資産コア業務純益率=-0.014%

 

【ワースト3】福邦銀行(本店所在地・福井県福井市)/グループ・Fプロジェクト
総資産(百万円)=444,141
コア業務純益(百万円)=217
総資産コア業務純益率=-0.049%

 

【ワースト4】筑波銀行(本店所在地・茨城県つくば市)
総資産(百万円)=2,381,813
コア業務純益(百万円)=2,017
総資産コア業務純益率=-0.085%

 

【ワースト5】みちのく銀行(本店所在地・青森県青森市)
総資産(百万円)=2,166,390
コア業務純益(百万円)=1,882
総資産コア業務純益率=-0.087%

 

 

まず、ワースト1位(以下、ワースト順)の島根銀行、2位の長崎銀行の「コア業務純益率」を見てみると、マイナス表記となっていることがわかるだろう。

 

「これは本業の『融資と手数料』の利益に対して、行員の給与など人件費、およびATMはじめシステム費などの『経費』が上回ってしまっている状態。『融資先が少なくなってしまった』のか、もうからない『低金利で貸している』のか、あるいはその両方といえます」

 

島根銀行のある島根県にはランキング94位の山陰合同銀行がある。収益がよい順からみれば8位にあたる同行は「県内シェア約6割の優良行」だという。対して島根銀行のシェアは1割ほど。

 

「借り手が山陰合同銀行のほうに行くなかで、銀行規模が小さく、より低金利ではもうけが出ません。さらにこの情勢のなか、’17年に本店ビルを約60億円かけて新築。その見通しの甘さも心配です」

 

2位の長崎銀行がある長崎県では、県内上位2行が10月に合併して「十八親和銀行」(23位)としてスタートしたばかり。

 

「水をあけられている長崎銀行は、59位の西日本シティ銀行(福岡県)のグループに入っていることが安心材料ですが、いずれグループ内で統合される恐れもあります」

 

3位の福邦銀行がある福井県は、構図がやや複雑だ。

 

「福井県では福井銀行(9位)がトップを走ってきましたが、同じ北陸で富山県トップの北陸銀行(62位)も、北陸3県に範囲を広げて“地域ブロック銀行”として営業展開しています。さらに、この北陸銀行は北海道銀行(77位)と、『ほくほくフィナンシャルグループ』として資本提携・経営統合し、福井県内で福井銀行に追随してきました。ひとりだけ“置いてけぼり”となった福邦銀行は、福井銀行との提携契約『Fプロジェクト』を本年度より始動しましたが、事実上、規模の小さい福邦銀行が吸収合併される色合いが強いと思われます」

 

5位のみちのく銀行と11位の青森銀行は、統合協議に向けて動きだしたと報じられていたが……。

 

「統合すれば大きな勢力になりますが、今のところ両行は統合について否定しています」

 

これら、ワースト上位行に共通することとは何だろう?

 

「100万人都市などの巨大都市がない県で、トップ争いから外れている地銀はかなり経営が厳しい傾向にありますね」

 

地銀再編は時代の流れ。菅首相の誕生で、その流れはさらに加速するとみられる。いざというときに焦らないため、“あなたの地銀”の状態を知り、備えをしておこう。

 

「女性自身」2020年11月17日号 掲載

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