14年で夭逝した娘のメッセージ「ママ がんばって立ち直って」
画像を見る 椿さんのいた日々を振り返る、みやびさんとご家族

 

■最後まで頑張った椿さん。葬儀の翌日、部屋の片付けで出てきたカバンに入っていたのは

 

「中学生になった椿とは、水分のことでよくけんかしました。椿は隠れて飲むんです。でも、すぐに顔が、目が開かないほど浮腫むし、本人がすごくしんどくなるから、わかるんです。それで『飲んだよね?』って聞くと、『飲んでないよ!』って、うそまでついて」

 

そんなとき、みやびさんは決して怒鳴るようなことはしない。

 

「何回言ったらわかるの? そんなことしてたら椿は死んでしまうかもしれないんだよ」

 

言葉を尽くし娘の理解を促した。それは「先々、私がいなくなっても、自分で自分の体を管理できるようになってほしい」から。

 

そんな親心を知らず、椿さんは、こう言って悪態をついたという。

 

「だって喉渇くんだもん、ママはいいよね、好きなだけ飲めて!」

 

何度、説明しても椿さんの水の過剰摂取はやまず、そのつど母娘は衝突を繰り返した。そして、たまった腹水を抜く治療は、椿さんの体に大きな負担となっていった。

 

中学2年の後半、目に見えて椿さんの体調は悪化していく。

 

「一昨年の11月に入ったころ、体力が急激に落ちてきて、ちょっと歩くだけで息が上がるように」

 

12月初旬、鼻血が止まらなくなり呼吸も苦しくなって緊急入院。いったん退院するも、クリスマスの日に再度入院し、2日後、医師から2度目の余命宣告を受ける。

 

「先生に呼ばれ説明を受けました。これ以上の治療はないということでした。『椿ちゃんとご家族が後悔のないよう、残された時間をどう過ごすか考えていきましょう』と言われて。年明けのカンファレンスでは『どこで最期を迎えたいか、決めておいてほしい』とも……」

 

じつは、みやびさんはこの少し前、椿さんに言われていた。「死ぬときが来たら教えてね」と。

 

「でも、言えませんでした。先生とも相談したんですが、本人の生きる気力を奪いかねないと。でも、感受性の強い子だから、椿はきっともう、わかっていたと思います」

 

医療スタッフの全面協力のもと、椿さんは最後の日々を過ごしていく。まずは退院して自宅に。そして、家族で温泉旅行。親友を家に呼んでおしゃべりもした。実の父の家に行き手料理もごちそうになった。幼いころから慣れ親しんだからか「病院にも行きたい」という本人のリクエストどおり2月3日、改めて入院もした。でも、もうこのときはモルヒネの量も増え、眠っている時間が長くなっていた。

 

そして、2月4日。早朝、椿さんの体はけいれんを起こした。それでも「最期はおうちがいい」という希望をかなえようと、みやびさんの妹が運転する車で自宅に。後部座席にみやびさんと椿さん、そして主治医も同乗してくれた。

 

「病院を出て15分ぐらいすると呼吸が弱くなって……、でも一度、大きな呼吸をして持ち直して。すぐその後、大きく2回、深呼吸をして、そして、息を引き取りました……。最後まで、椿は頑張ってくれたんだな、と思いました」

 

2月7日。

 

前日に葬儀を終え、みやびさんたち家族は、椿さんが使っていた部屋の片付けをしていた。

 

「そこに病院に持参していたカバンがあって。『この中も整理せんといけんね』って。じつは椿、使ったティッシュとか、食べ残したお菓子とか、平気でどこにでも入れておく癖があったから。そしたら、本当にそんなゴミが出てきて『ほら、やっぱり』なんて3人で、笑ったり、泣いたりしながら……」

 

そのカバンのポケットに入っていたのが、小さなメモ帳だった。

 

「『どうせ使っていないやつよな』と言いながら、何げなく、本当に何げなく、でもなぜか私、後ろ側からパッと開いたんです。そうしたらそこに『ママ!!』って、椿の書いた文字が……、目に飛び込んできて……、不意に、椿から呼びかけられたみたいな気がして……」

 

メモ帳には、1ページに1フレーズずつ大きな、でも震える線で、次の言葉が書き連ねてあった。

 

〈ママ!!〉
〈大好きだよ〉
〈愛してるよ〉
〈必死におうえんしてる〉
〈いつでも見てるよ〉
〈天国かじごくで〉
〈だから〉
〈がんばって立ち直って〉
〈あの世でまたあそぼ?〉

 

ページをめくるみやびさんの目から、みるみる涙があふれていた。

 

「びっくりして、でも、うれしくて。声を上げて泣きました。泣きながら、いろんな思いが湧いてきてしまって。『いったいいつ書いたの?』とか、『どうしてこんなこと書けたの?』とか。死を前にしてすごく怖かったろうに、そんなことおくびにも出さずに私を気遣う言葉を書き残したあの子が誇らしく、そしていっそういとおしく思えました」

 

そうふり返った母の目に、あの日と同じ大粒の涙が光っていた。

【関連画像】

関連カテゴリー: