連合発表「平均5%超の賃上げ」も9割の雇用者に関係ない…給与増なしでさらなる増税と物価高の懸念も
画像を見る 賃上げの成果を誇る岸田首相だが……(写真:時事通信)

 

■賃上げ増税に、さらなる物価上昇の懸念も

 

不安しかない状況だが、私たちの生活はどうなるのだろう。

 

「国は賃上げ税制で法人税を優遇しますから、その分、税収が減ると考えられます。ですが、国家予算は年々拡大しているので、なにか別の財源を確保する必要があります。それが個人の所得税や社会保険料の引き上げに向かう可能性があります」(斎藤さん)

 

たとえ給料が上がっても、税金や社会保険料が増えたら、結局手取りは増えない。しかも、給料が上がっていない人、さらには職を失った人に大増税が降りかかったら、路頭に迷う人が大勢生まれるだろう。

 

「企業にすると、賃上げは人件費コストの上昇です。コストが増えたら商品価格を上げるでしょう。すると、物価がさらに上昇します。賃上げがあってもそれ以上に物価が上がり、また賃上げ、そして物価高騰と悪循環が起こります」(斎藤さん)

 

国は「賃金と物価の好循環」を強調するが、実際に起きるのは悪い循環だという。

 

「実際に受け取った給料から、物価変動の影響を除いた『実質賃金』は前年同期に比べてマイナスが22カ月続いています(2024年3月、厚生労働省)。国は、賃金が上がれば実質賃金がプラスになって家計が落ち着くと期待させていますが、物価の高騰が続くので、実質賃金がプラスにはならないと思います」(荻原さん)

 

日銀が4000人を対象に生活実感を問うアンケート調査でも、「生活にゆとりがなくなった」という回答が2022年ごろから50%を超え、高止まりの様相だ。スーパーで値上がりしないものはなく「買えるものがない」と肩を落とす人も多い。

 

「総務省の消費者物価指数(総合)では前年比3.2%の上昇ですが、実際の肌感覚とは大きく離れています」(斎藤さん)

 

先述の日銀調査で「1年前に比べ現在の物価は何%程度変化したと思うか」と問いがある。消費者が実感する物価高は、直近データでは平均で16.1%の上昇だ(上表参照)。消費者物価指数とは比べものにならないほど高い、これこそが私たちの実感なのだ。

 

「消費者が実感する物価高は、賃上げ率が5%を超えた程度の給料アップではカバーできません」(斎藤さん)

 

だが、日銀のマイナス金利解除を受けて、三菱UFJ銀行などが普通預金の金利を引き上げた。これは朗報では?

 

「三菱UFJ銀行の普通預金金利は0.001%から0.02%になりました。その差は20倍です。ただ、100万円を1年間預けた場合の利息が、これまでの10円(税引き前、以下同)から200円になるということ。ATMの時間外手数料などで消えてしまうわずかな金額です」(荻原さん)

 

たとえ“焼け石に水”でも賃金アップはなくてはならない。来年以降も続くのだろうか。

 

「大企業には余力があり、賃上げ税制も続くので期待する人も多いでしょう。ですがそれらより、今後の消費が大問題です。仮に、物価がもっと高騰して消費が冷え込んでしまうと、企業は儲かりませんから、賃上げはもうしないでしょう。いったん上げた給料は下げられず、賃上げはリスクとなります」(荻原さん)

 

給料が上がっても、財布のひもをゆるめてはいけない。来るかもしれない大増税に備えが必要だ。

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