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名門ホテルであるヒルトン東京で、ボーカロイド楽曲やアニメソングの生演奏を聴ける――。そんなツイートが、9月30日にTwitter上で話題となった。

 

《ちょっと待った! まさかヒルトン東京で!? Sound Horizonのエルの絵本を聴けるとは思わなんだ ちょっと聞いてヒルトン東京だよ!?》

 

バイオリンの演奏動画つきのツイートは、9,000回以上リツイートされ、1.8万件もいいねされた。

 

だがTwitterではこの投稿に対して《割とアニソンとか弾いてるよヒルトン。私行った時確かけいおん弾いてて「おお」って思った(笑)>>RT》《ヒルトン東京はボカロも演奏してた》など、過去にヒルトン東京でアニメソングやボーカロイド楽曲の演奏を耳にしたという声も寄せられている。

 

楽曲が演奏されている場所は、ヒルトン東京でスイーツビュッフェを提供している「マーブルラウンジ」。1984年、ヒルトン東京が新宿で開業したのと同時にオープンした、30年以上続くラウンジである。そんな歴史ある店で、なぜ若者向けの音楽演奏を行っているのか。ヒルトン東京の広報担当者に話を聞いた。

 

■スイーツに合わせて、生演奏や謎解きも行うビュッフェに

 

「マーブルラウンジで現在のようにストーリー性のあるスイーツと空間づくりを始めたのは、2015年からです。毎年4回、テーマや演出を変えて様々なフェアを開催しています。フェアの内容が変わる毎にプロジェクションマッピングやトリックアート、謎解きなどの演出を行っています。生のクラシック演奏は2017年春の『マリーアントワネット』をテーマにしたときが初めてで、今回で4度目になります」

 

冒頭で目撃された今回のイベントは、『アリスinローズラビリンス』。11月14日まで行われているが、話題となっている選曲は意外な形で選ばれていた。

 

 

「バイオリン奏者の方にフェアのイメージや世界観を伝えたうえで、お任せしているんです。アニメ、ボーカロイド楽曲やポップスのアレンジを始めたのは、2018年9月から11月にかけて開催した『アリスinハロウィーン・トリック』の頃でした」

 

■カバーしていたサブカル楽曲をヒルトンで演奏

 

ツイートで話題となったバイオリン奏者のMoeさんは、アニメソングやボーカロイド楽曲の演奏を始めた理由についてこう語る。

 

「昨年の『アリスinハロウィーン・トリック』初日の演奏メンバーが、サブカル系の音楽をライブや動画でカバーしていたんです。サブカル系の楽曲はそれぞれ物語や世界観があり、『マーブルラウンジ』のコンセプチュアルなデザートビュッフェにも合う。そう思って演奏してみたところ、お客様やヒルトンのスタッフの皆さんからもご好評いただきました。それが他の奏者にも拡がり、現在のスタイルになっています。意外なことに、おそらくその曲を知らないであろうご年配のお客様や海外からのお客様が大きな拍手をくださることも多くて。いい曲はジャンルを超えて伝わるのだなと感じています」

 

Moeさんたちの世界観の演出は、楽曲だけにとどまらない。スイーツのテーマに合わせた衣装も好評だという。

 

 

「バイオリン生演奏をただのBGMとしてだけではなく、アトラクションとしても楽しんでいただけるよう心がけています。『ヴァイオリニストはドレスでクラシックを演奏する』というイメージの枠を超えて、ビュッフェのコンセプトに合わせて衣装や曲を選んでいます」

 

■バイオリン演奏がSNSでバズる理由

 

また、Moeさんたちはファンが喜ぶための工夫も欠かさない。

 

「その日、ご来場いただいたお客さまのツイートをリサーチしています。またアニメや楽曲、アーティストの記念日にその曲を演奏することもあります。国民的アニメの主題歌を実際に歌っている歌手の方から、ご自身の曲をリクエストいただいて演奏したこともありました。アニソンやボカロだけでなく、J-popや洋楽をアレンジして弾いている奏者もいます。それぞれ奏者の個性や好みが強く出ているので、奏者によるレパートリーの違いを楽しんだり、お気に入りの奏者をみつけて聴きに来ていただけたら嬉しいです」

 

こういった“バズる生演奏”は、来場者の満足度にも大貢献している。マーブルラウンジの予約数は平日で1日200~250名、週末で280名ほど。現在開催している『アリスinローズラビリンス』は、会期中の週末はすでに満席だという。前出のヒルトン・広報担当者はこう語る。

 

「お席を予約する際、事前にバイオリン奏者の近くの席をご指定される方が月に平均30~40名様ぐらいいらっしゃいます。またホテルのスタッフはあまりボーカロイドなど詳しくなかったのですが、お客様のSNSのコメントをみて人気の高さを知りました」

 

シェアしたくなるスイーツビュッフェ。今後のテーマにも注目が集まりそうだ。

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