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「医療費の払い戻しがある」などと言ってお金をだまし取る「還付金詐欺」が全国的に増えている。2月18日に秋田県湯沢市で60代女性が約100万円を、翌19日には埼玉県狭山市で70代女性が約150万円をだまし取られるなど、被害が相次いでいる。

 

そんな、還付金詐欺について経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた――。

 

■巧妙なマインドコントロールに注意

 

還付金詐欺の’21年の年間被害金額は前年から約20億円増えて約45億円。被害件数は、前年から倍増して4001件です。この被害件数は、昨年のさまざまな詐欺被害のなかでもっとも多く、47都道府県すべてで発生しています。さらに、被害者の約95%が65歳以上で、その約72%が女性です。

 

還付金詐欺が増えた原因は、コロナ禍で医療費への関心が高いこと、巣ごもりで在宅時間が長く電話を取る人が増えたことなどが考えられますが、高齢女性の被害をどうすれば減らせるのでしょうか。

 

還付金詐欺の手口から見ていきましょう。詐欺師は電話で、「入院費の返金がある」「介護費の払いすぎを戻す」などと持ち掛けます。「先月入院していた」「介護サービスを受けている」などの事情が合致すると、詐欺師の話に引き込まれてしまいます。払いすぎた医療費などの返金は“ありえる”ことだからです。

 

詐欺師はこうしたありえることを積み重ねて信用させ、最後に「ATMの操作で返金される」と誘導します。ですが、ATMで還付金を受け取ることは絶対に“ありえない”こと。これだけを覚えておけば、「おかしい」と気づけるでしょう。そして、いくら急かされてもいったん立ち止まって、家族や警察、消費者センターなどに聞いてみてほしいと思います。

 

こうした還付金詐欺への対策として、ATMでの振り込みを利用していない高齢者には、振込み限度額を低く制限する金融機関も増えています。限度額を超える振り込みができなくなるため、詐欺被害に遭わない、たとえ遭っても被害を少なく抑えるためです。これは個人としても有効な手です。振込み限度額の設定はネットバンキングや店舗に行けばできるので、設定を変えておくと安心でしょう。

 

また、警察庁と金融庁は今年1月から「ストップ! ATMでの携帯電話」を実施。ATMのまわりでは携帯電話を使用しないよう注意を促しています。銀行員が声をかけ、詐欺を未然に防いだケースもあるようです。

 

ところが、2月18日北海道室蘭市では、電話を受けながらATMを操作する70代女性に、別の利用客が「詐欺ではないか」と声をかけましたが、「私は大丈夫」と振り切って被害に遭いました。

 

詐欺師は巧妙です。マインドコントロールに似た状態に陥るのかもしれません。最近は事前に何度か電話をかけ、個人情報を集めたうえで、詐欺電話をかける用意周到なケースも増えています。「だまされてしまう」ことを前提に、対策を打っておきましょう。

 

【PROFILE】

荻原博子

身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある

経済ジャーナリスト

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