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「新型コロナウイルス感染拡大はいまだにおさまっていませんが、このコロナ禍が収束するころには、『税金を増やすことで対策費の支出分をカバーする』という議論が、にわかに進む可能性が高いと考えています」

 

こう話すのは、国の財政事情に詳しい経済評論家の加谷珪一さんだ。

 

すでに7月1日、自民党の石原伸晃元幹事長らは、安倍晋三首相に“税収増”の要望をするため、首相官邸を訪れている。石原氏の意図は、“新型コロナウイルス対策への多額の財政支出が将来世代の負担にならないよう”ということらしいが……。

 

「私の考えでは、増税はもはや自民党内での既定路線。この面会はあくまで“パフォーマンス”でしょう。安倍政権や与党の幹部が増税の話題を切り出せば、世論の大反発を招く恐れがあります。この面会は、『元党幹事長からの要望があった』という体で、マスコミや世論の反応をうかがうためのものだったとみています」(加谷さん)

 

政府は先の国会において、第1次、2次補正予算として合計約58兆円の財政支出を決定。財源には国債が充当された。しかし、なぜその支出が、税金でカバーされなければいけないのか。加谷さんが続ける。

 

「Go To トラベルキャンペーンにおいても当初、赤羽一嘉国交相はキャンセル料の補償を『考えていない』と発言していました。つまり、政府はこれ以上、コロナ対策として出せるお金がないと考えているはずです。経済が成長しさえすれば、GDP(国内総生産)が上がることで政府債務の比率は下がるのですが、コロナ禍により経済はたいへん落ち込んでいる。政府は現状、増税しか手段がないとみているのでしょう」

 

国民が、いつ収束するかわからない“コロナ第2波”に再び恐怖している最中に、国は着々と“アフターコロナ増税”の計画を進めているという事態……。

 

では、この増税はどのような規模で、いつから実施されるのか。加谷さんにシミュレーションしてもらった。

 

「財務省が参考にするのは『復興特別税』でしょう。政府は東日本大震災の復興にかかる財源の確保のために、特別措置法(特措法)として同税を導入しました。主な内容は、’13年から’37年までの25年間に、所得税額の2.1%を徴収するものです。これと同じようなプランをもとに、『コロナ特別税』というかたちで、長期間に徴税できるシステムを想定していると思われます」

 

震災復興予算は総額32兆円となっていて、このうちの10.5兆円分を「復興特別税」でカバーしている。その内訳は、ほとんどが所得税額の2.1%として徴収しているもの。

 

これをモデルとして「コロナ特別税」について加谷さんはシミュレーションする。

 

「復興特別税は、支出の天井画が見えないうちに始めたものでした。当初は“とりあえず10兆円集めることを目標に”という意図で、所得額の2.1%ぶんと定めたと思われます。コロナ特別税に関しては、現時点でコロナ関連予算として決定されている58兆円を天井だと仮定し、現状の経済状況も踏まえて『半分は国債(=借金)として経済成長で補填し、半分は徴税する』という条件で試算を行います。この29兆円は、復興特別税の約3倍。しかし徴税期間も3倍にするのは長すぎますので『30年』に設定すると、1年あたり『9,600億円』徴税する必要があるという計算になります。現在の所得税の税収は年間約20兆円ですから、ここから9,600億円を捻出するとなると『4.8%』の上乗せが必要となるんです」

 

つまり、現行の復興特別税の、2倍以上の負担が単純に増すことになるのだ。

 

「会社員の夫の年収600万円、妻は専業主婦、子ども2人」という世帯をモデルに、加谷さんに具体的な負担額も試算してもらった。

 

「給与所得控除、基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除などを差し引いた『課税所得金額』は約268万円。所得税額は約17万円です。現状ここから復興特別税(2.1%=3,570円)を納めていることになりますが、そこにコロナ特別税(4.8%=8,160円)が加算されます。つまりコロナ特別税が施行されれば、’37年までは合計『1万1,730円』を特別税として年額で負担することになるんです」

 

気になるのはそのコロナ税の法制化と施行のタイミングだが……。

 

「安倍首相の党総裁の任期満了は来年9月、衆議院議員の任期満了は10月です。政府や与党は、その前に施行するのが勢力維持には無難である、と考えるでしょう。そのためには秋の臨時国会で議論、そして早ければ年内に可決して、’21年4月から施行という可能性もあります」

 

もしも施行が来年度からといっても、「いまから備えておくべきだ」と加谷さんは説く。

 

「大企業では、’21年3月の決算と来年度予算を見越して、この秋、9〜10月にはコロナリストラを本格的に始めるでしょう。失業率や企業の倒産数も発表数より、実際はもっと増えていくはずです。すると、秋口から景気はさらに冷え込み、来年度の給与や賞与はとても厳しい予測も覚悟しなければなりません。各家庭では、マイカーなどの大きな出費を考えている場合、いまの時期は控えるほうが無難かもしれませんね」

 

新型コロナウイルスがもたらす“恐怖の時代”は、まだまだ終わらなさそうだ。

 

「女性自身」2020年8月11日 掲載

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