来年4月の消費税増税が迫り、住宅の駆け込み需要が加速している。このままでは、増税後に住宅販売数の急激な低下が予想され、景気への悪影響も懸念されている。
「大型の住宅ローン減税はすでに決まっていますが、加えて、減税の恩恵を受けにくい方向けの給付制度が、自民・公明両党で合意に至りました。この給付制度は、消費税が8%(あるいは10%)で住宅を購入しローンを組んだ方が対象で、年収により現金が給付されるというものです」
そう話すのは経済ジャーナリストの荻原博子さん。具体的に現金給付される金額は、消費税8%の場合、年収が425万円以下で30万円、425万〜475万円で20万円、475万〜510万円で10万円。消費税10%では、年収が450万円以下で50万円、それから5段階に分け、675万〜775万円で10万円。さらに、退職金などを使ってローンを組まずに住宅を買う人も50歳以上で制限所得以下なら給付がある。
一方、ローン残高の1%が10年間控除される住宅ローン減税は、現行では残高上限が2,000万円、控除は最高20万円だったが、これも拡充され来年4月以降は、消費税8%(あるいは10%)で購入した場合、残高上限が4,000万円、控除は最高40万円まで引き上げられる。だが、収入が低く年間の納税額が住宅ローンの控除額より少ない人は、減税の恩恵を十分に受けられない。これを補完するために、収入により現金が給付されることになったのだ。
「政府としては、住宅ローン減税と給付制度があれば、消費増税の前であっても後であっても、負担はそれほど変わらず、住宅は買いやすいと言いたいのでしょう。政府の狙いは、消費税が上がる4月をはさんで、それ以前は駆け込み需要で盛り上がり、以降は反動で住宅業界が急激に冷え込むのを抑えることにあります。景気動向を考慮した、消費増税ありきの場当たり的な施策。消費税を上げる代わりのあめ玉なのです」
住宅購入は大きな買い物だ。消費税が3%上がるだけで何十万円も負担が増える。それなら、消費税が上がる前に住宅を購入しようと考え急ぐ人もいるはず。大手銀行が先月に発売した超低金利の住宅ローンなど「今が買い時」という宣伝文句も多い。しかし、荻原さんはこれらに惑わされてはいけないと語る。
「私は、住宅購入を焦る必要はまったくないと思っています。アベノミクスも期待したほど有効ではなく、これから給料が増える見込みは、残念ながらありません。子供は成長するにつれ、お金がかかります。住宅購入に踏み切る前に、じっくりと自分のライフプランを考えましょう」