「私も羽生選手が使用しているマスクを実際に使用してみました。たいへん優れたマスクで、これをしてスケートができるのはすごいなと驚きました」
こう話すのは、呼吸器内科医の大谷義夫先生。フィギュアスケートの羽生結弦選手が’15年に中国・上海で行われた世界選手権に出場時、会場入りの際に着けていて話題になったのが、くればぁ社製の超高機能マスクだ。
「0.3マイクロメートルの微粒子を95%以上カットできる機能(N95)を持つものが超高機能マスクの基準のひとつ。羽生選手はもともと気管支が弱いことから、PM2.5(2.5マイクロメートル以下の粒子状物質)やウイルス感染予防のために、このマスクを装着していたそうです」
しかも羽生選手はこれをリンクでの練習時にも着用していた。
「超高機能マスクはきめが非常に細かいため、慣れないと空気を吸い込むのに苦労します。肺活量が少ない人は、すぐに息苦しくなってしまうのです。特に羽生選手が着けている超高機能マスクは0.1マイクロメートルの微粒子を99%カットできる世界最高水準。通常、日常生活で着用しても数分で息苦しくなってしまうレベルです。じつは、この超高機能マスクによる“呼吸のしづらさ”はダイエットに応用することができるんですよ」
マスクでダイエット!? いったいどういうことなのだろう。
「ふだん、私たちは無意識に1分間に15回前後の呼吸をしています。これを1日に換算すると約2万回。1回1回の呼吸が深くなると、2万回の呼吸運動で消費するエネルギーは大きく変わってくるのです」
現代人はデスクワークやスマホ使用などで前かがみの姿勢になることが増えている。このため、呼吸が浅くなりがちだという。
「肺は、内臓で唯一自らは動かない臓器。動かすためには横隔膜や外肋間筋といった“呼吸筋”の働きが必要です。ところが呼吸が浅くなると、この呼吸筋への負荷が減り、消費カロリーも減ってしまいます」
高機能マスクを着けるだけで、呼吸筋に加圧トレーニングをするような環境を作ることができ、結果的にそれが痩せ体質を作る。
「N95レベルのマスクを着用すると、呼吸時の抵抗が通常時の何倍にもなるため、呼吸筋を大きく動かさないと息が苦しくなってしまいます。結果的に呼吸が深くなり、酵素をより多く取り込むことができ、脂肪の燃焼が促進されます。新陳代謝が活発になり、消費カロリーも格段に増えるのです」
ポイントは「N95レベル」のマスクを選ぶこと。羽生選手が使用するのはオーダーメイドのもので1枚約1万5,000円と高額だが、一般用のものは薬局などで1枚300円くらいから手に入る。これを、鼻からあごにかけてきちんとフィットさせれば準備はOK。
大谷先生は自らのクリニックで患者さん51人に高機能マスクを配布し、2週間で体重にどれだけ変化があったかを調べたことがあるという。
「食事の時間などを除いた1日合計8時間の着用で、51人中じつに48人が効果を実感されました。平均で体重が約2キロ減、いちばん痩せた人は4キロも減少しました」
1日8時間のマスク着用とはどんなものか。本誌記者もN95のマスクをして過ごしてみた。
初日。朝食後、マスク着用で出勤。昼食まで外さない。これで約4時間。昼食後、再び着用し夕食時まで着ける。これで合計8時間をクリア。
着用2日目は休日。少し遅めに起きて、朝食後からマスクを着用。昼食をはさんで、夕食時までできっちり8時間になった。いちばんきつかったのは、掃除機をかけるとき。息苦しさから、何度か掃除機を動かす手を止め、小休止する必要があった。
「患者さんのなかには、マスクをして自転車に乗ったら、息切れして途中でペダルがこげなくなった人や、ジョギングをしたら1分間で倒れそうになってしまったという人もいました。慣れるまでは、息が上がるようなシーンでの着用は避けたほうが安全でしょう」
3日目になると、呼吸筋がマスクの負荷に慣れてきたのか、体を動かしても息が切れることが少なくなった。1日8時間の着用は思ったほど負担に感じない。
こうして1週間、1日8時間のマスク着用を続けたところ、なんと2キロの体重減!
「マスクをすると、外すのが面倒になるため、自然と間食が減るという傾向も。これも含め、痩せやすい体質への改善が見込めるようです」
寝ている時間に着けてみては、と思うかもしれないが、大谷先生によれば、良質な睡眠を確保するためにも就寝時に高機能マスクを着けるのは避けたほうがよいそうだ。
花粉症の季節は過ぎようとしているが、これからの季節は中国大陸から大量の黄砂やPM2.5が飛来してくる。
「こうした有害物質を体内に取り込まないようにするという意味でも、外出時の高機能マスク着用は非常に有効です」
まさに一石二鳥。マスクを着けるだけと手軽にできるので、ぜひお試しあれ!