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40代に入ると、おしっこが「出にくい」、「近い」、「夜中にトイレに行きたくなる」といった悩みを持つ人が少しずつ増えてくる。そのなかでも断トツなのが「夜間頻尿」。

 

夜中に起きて1回以上トイレに行く人は、40代以上では約4,500万人いるといわれている。加齢とともにその人数は増え続け、50代で約6割、60代以上になると約8割の人が夜間頻尿に悩んでいるという。

 

夜間にトイレに起きることは、単に「面倒くさい」だけでは済まされない問題があると、国立長寿医療研究センター副院長で泌尿器科が専門の吉田正貴先生は語る。

 

「日常生活のなかにどれくらい困っていることがあるのか。が治療の対象になるポイント。夜中に何回起きても困っていることはない、という人は治療の対象にはなりません。しかし、夜中に2回以上トイレに起きると、QOL(生活の質)が低下して困ることが多い、といわれています」

 

夜間頻尿の多くは、同時に「夜間多尿」であることが多く、1日の尿量の3分の1が就寝中に出ていると夜間多尿となる。

 

通常、昼間に比べて夜間の尿量は減るのだが、加齢により夜間の尿量を減らす「抗利尿ホルモン」の分泌量が低下したり、尿を濃縮する腎臓の機能が衰えたりすることで、夜中に作られる尿が増えてしまうのだ。

 

そして、もう1つ。夜間頻尿の大きな原因が意外なところにあることがわかってきた。

 

「私たちの体は体内の水分量を一定に保つため、食事や飲み物などで摂取した分を、主におしっこに変えて排出します。昼間に立ちっぱなしだったり、長時間座ったままだったりなど、同じ姿勢で過ごしていると、重力によって体の水分が下肢にたまります。さらに、加齢とともに血液を循環させる機能が低下することで、足の水分が血管から漏れ、ふくらはぎにたまってしまうのです」

 

夕方以降になると「足がパンパンにむくむ」というのはこれが原因。日中に摂取した水分がふくらはぎにたまってしまうことから、“ふくらはぎは第2の膀胱”と呼ぶ人もいるという。

 

こうしてふくらはぎにたまった水分が、横になったときに再び血管に戻り、血液中の水分を減らそうとして、夜間おしっこが作られてしまうと考えられている。

 

「診療の現場では、自分でできるチェック方法として『排尿日誌』をつけてもらいます。膀胱にたまっていて排尿された量と排尿回数を知ることで、ふくらはぎに水分がたまっているかどうかがわかるのです」

 

用意するものは、500mlまで測定できるような計量カップ。もしくは使い捨ての紙コップに50mlずつ印をつけたもので代用してもよい。記録のつけ方は、朝起きて1回目から翌朝起きて1回目までのおしっこを取り、その量と時間を記録するだけ。

 

起床後2回目から翌朝1回目までのおしっこの量を足して、その合計を3で割った数字よりも、就寝後から翌朝1回目のおしっこの量が多い場合、夜間頻尿の原因の1つである「夜間多尿」と診断され、ふくらはぎに水分をためている可能性が高い。

 

多尿には、糖尿病などの内分泌系疾患、水分の取りすぎといった原因の場合もあり、夜間多尿には、高血圧、うっ血性心不全(心臓の働きが弱った状態)、腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群などが潜んでいるケースもある。

 

おしっこの問題があるときは、内科や婦人科ではなく、泌尿器科の医師の診断を受けよう。

 

「約11年ぶりに改訂された『夜間頻尿診療ガイドライン 第2版』(日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会編集)には、副作用の少ない治療法の第1選択肢として行動療法が推奨されています。水分制限、塩分制限、運動療法など、いずれも自宅で行える簡単な方法ばかりです。きちんと続ければだいたい1カ月程度で改善してきます」

 

「女性自身」2020年9月22日 掲載

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