「日本には傾斜が急な山が多いため、台風による大雨やゲリラ豪雨が降ると土砂災害(土石流、がけ崩れ、地すべり)が発生しやすいのです。さらに近年は気候変動もあって、『線状降水帯』が長雨をもたらすなどの事例が増えており、大雨が引き金となる災害リスクは高まっているといえます」
こう語るのは、さまざまな災害データを基に、地震、津波、洪水などのリスク分析を行う、災害危機コンサルタントの堀越謙一さん。
連日、大雨に関するニュースが後を絶たない。今年7月1〜3日には記録的な大雨が東海地方と関東地方南部を襲い、静岡県熱海市では大規模な土石流が発生した。死者・行方不明者27人。被害家屋棟数131件。土石流の瞬間を捉えたニュース映像は記憶に新しい。
現在、日本全国で土砂災害が発生する危険のある区域は47都道府県のいずれにも存在し、その数は合計でじつに約68万カ所を数える。国土交通省の統計データに基づき、全国で発生した土砂災害の件数を平均すると、年間に1,105件(集計を開始した’82〜’19年までの平均)。年間で発生件数が最も多かったのは、’18年の3,459件だった。
土砂災害と並び、大雨によって人的・物的被害をもたらすのが、河川の氾濫による洪水だ。
令和元年台風19号では、広範囲を記録的な大雨が襲い、関東・東北地方を中心に、74河川の140カ所で堤防が決壊するなどの甚大な被害をもたらした。
「先述したような地形の特徴から、日本には世界に類を見ないほどの数の急流河川が存在し、それらの川は蛇行して流れています。河川流域や河口周辺には、河川が運んだ砂礫、泥流で形成された平野が広がっており、地盤はもとより軟弱。さらに水はけの悪い三角州や扇状地といった土地も多いため、日本は河川の氾濫によって水害が起きやすい地形でもあるのです」(堀越さん・以下同)