《音楽の未来を奪うチケットの高額転売に反対します》
嵐、サザンオールスターズ、福山雅治など錚々たるアーティスト116組(後に56組が加わり172組)が名を連ねて共同声明を発表したのは今夏のこと。それなのに、ネット転売は後を絶たない。
9月14日、香川県のブリーダーの女性(25)が、嵐のライブチケットを転売したとして、北海道警察に逮捕された。交換サイトで入手したチケット5枚を計7万円で転売した女性には、これまで嵐などのライブチケット約300枚を高額転売し、1,000万円を売り上げた疑いがあるという。
「ぴあ ライブ・エンタテインメント白書2016」「日本のレコード産業2016」資料を見ると、昨年のライブチケットの販売額の合計は、CDなどの音楽ソフトと有料音楽配信の売上額を軽く超えている。アーティストはライブ活動で稼ぐ時代になったということだ。そこで気になるのがチケットの値段。いったい誰が決めているのだろう。
「アーティストが所属する事務所のチーフマネージャー的なポジションの人が決めています。もちろんビッグアーティストになれば発言力も強くなり、マネージャーと一緒に値段を決めていくこともあるでしょう」(音楽プロデューサーの山口哲一さん)
お目当てのアーティストであれば、そのライブには何万円出しても行きたいというファンも多いはず。だからといって、チケットの値段を単純に高くすればいいというわけではない。
「チケットが7割以上売れないとライブの収益は赤字になるといわれています。高く設定しても売れなければ大赤字になってしまう。かといって、安すぎても足が出てしまう。チケットの価格設定には、綿密な計画があるわけではありません。むしろ“長年の経験”をもとに決めていることが多い。『前回は◯千円で売れたから、今回は△千円で』とか、『演出に凝りたいから、少し高めに』といった感じで決められていきます。さらに『ファンに申し訳ないから、チケットは高くしたくない』というアーティストもいる。そんな日本的なマインドまで反映された値段なのです」(山口さん)
「チケットの価格設定にはさまざまな思惑も絡む」と語るのは、ある音楽誌の編集者。
「たとえば会場で売るグッズも大きな収益源です。グッズをたくさん買ってもらうために、あえてチケットを安く設定することもあります」
ライブには当然ながら経費がかかる。
「まずは会場使用料に、音響や照明の設備費、アーティストの出演料、音響技師や照明プランナー、舞台監督などの人件費がかかります。さらに衣装などステージ上の必要経費であるライブ制作費、宣伝費、会場警備などステージ以外でかかるイベンター経費なども加わります。とくにライブ制作費は、舞台装置や衣装などにお金をかけだしたらキリがありません」(山口さん)