(写真・神奈川新聞)
「この光景は一生忘れられない」「待ちに待った瞬間」-。サッカー・J1リーグで悲願の初優勝を果たし、10日に行われた川崎フロンターレの凱旋(がいせん)パレード。川崎駅東口付近の沿道を埋めた約5万人の市民やサポーターは歓喜の声を上げた。クラブ創立以来、地域と共に歩んできたチームとファンの21年間の思いが結実した。
市内での優勝パレードは、1994年2月のヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)のJリーグ初代王者を記念して行って以来23年ぶり。当時は平日だったこともあり2万人弱だった。
これまで野球の大洋(現横浜DeNA)、ロッテ(現千葉ロッテ)、そしてヴェルディと多くのプロチームが川崎を離れた。
しかしフロンターレは、商店街のイベント、浴場組合とのコラボレーション、多摩川での美化活動、子どもたちの教育活動など、常に地域と共に歩んできた。その活動は年間千件を超えるといい、Jリーグで7年間、地域貢献度ナンバーワンチームに選ばれた。
パレードの前に市庁舎で行われた市長報告会で、チームの藁科義弘社長は「初タイトルにおごることなく、(地域活動と本業)2本柱に一生懸命取り組んでいきたい」と約束。福田紀彦市長も「地域でいろいろな活動をしていただき、フロンターレを愛する市民が増えた。市役所通りにこんなに多くの人が集まったのは見たことがない」。オープンバス上でチームに市スポーツ特別賞を贈った。
パレードには、曲が応援歌になっている3人組ロックバンド「SHISHAMO」が駆け付けた。マスコットのふろん太などと先頭を歩いた宮崎朝子さん(22)らは「ずっと応援していたので、本当にうれしい」と笑顔を見せた。
市庁舎には15メートル四方のフラッグや巨大ユニホームが飾られ、沿道の川崎信用金庫本店などのビルには、「優勝おめでとう」の懸垂幕や横断幕も飾られた。バス2台に分乗した選手らが手を振ると、幸区の大学生窪田祥樹さん(23)は「本当に幸せ。ずっとこの瞬間を待っていた」と興奮気味。
優勝シャーレを掲げた中村憲剛選手が「この景色は忘れない」と話すと、中原区の会社員寺嶋美佐江さん(42)は「私たちも忘れない。中村選手がずっとこのチームで戦ってくれ、優勝でき本当によかった」と感極まった表情だった。
川崎銀座商業組合の小林一三理事長(53)は「振り込め詐欺防止キャンペーンなどでも協力してもらった。地域に貢献してもらっており、来年は連携してきたい」と期待する。
優勝効果で、来季の後援会申し込みも既に2万5千人となり過去最多ペース。連覇に向け地域の応援態勢も広がっている。