県外機動隊員による「土人」発言をデザイン化したトートバッグを手にする沖縄大学の小野啓子教授=15日、那覇市の沖縄大学(写真・琉球新報社)
「土人」って「つちんちゅ」? 米軍北部訓練場のヘリパッド建設に反対する市民に対し大阪府警の機動隊員が「土人」と発言した件をテーマに、沖縄大学の小野啓子教授とゼミ生らが「土人」発言をデザイン化した「つちんちゅ」トートバッグを制作した。「土人(どじん)」という差別用語を知らない高校生が、「海人(うみんちゅ)」に倣(なら)い「つちんちゅ」と読んだことをきっかけに、意味のずれをビジュアル化しようと制作に取り組んだ。
トートのデザインは、「土人!」の吹き出しに対し「何それ? つちんちゅ?」との返答を配し、「土人」が本来持つ差別性が伝わっていないジェネレーションギャップを表現。沖縄の場所性を表すため、米海兵隊輸送機MV22オスプレイを飛ばし、赤い丸の「県章」をはすに構えてデザインした。
沖縄移民の歴史も研究する小野教授は、戦前からの「土人」の言葉の認識として「文明化されておらず、野蛮で知性が低いとの意味が込められている」と解説。沖縄人が南洋やハワイでも差別されてきた歴史を現在の若い世代は知らないと指摘した。「沖縄の若い世代は差別の歴史を知らず、差別されているとの意識もない。高校生の反応には無邪気なユーモアが感じられデザインに取り入れた」と制作意図を説明した。
一方「土人」発言を巡っては鶴保庸介沖縄担当相が「差別と断じることはできない」などと差別性を認めない発言を繰り返している。小野教授は「高校生は無知のイノセント(無罪)だが、大臣は認識を持ちながら発言しイノセントではない。見る人によってさまざまな意味になり得て、図らずも複雑なデザインになってしまった」と話す。
「土人」トートは50枚の数量限定で年内に制作予定。問い合わせは小野教授の電子メールtsuchinchu.tote@gmail.comまで。(滝本匠)