年の瀬が迫ってきました。クリスマス商戦と同時にデパート、スーパーにはお歳暮ギフトコーナーが設置され、暖かい沖縄も少しずつ年末気分が高まって来ています。
全国どこでも見られる日本の風景と思っていたら、実は沖縄だけ!?というのがあるそうなんです。県外出身で沖縄の男性と結婚した「ウチナー嫁」や県外からの移住組に聞いてみました。
◇ピークは正月三が日
「本土だと12月31日より前に宅配で届けるのが普通だけど、沖縄は正月三が日に持って行くのに驚いた!」。移住者の1人はまず時期の違いを口にします。
沖縄でもお歳暮ギフトコーナーが11月末〜12月上旬から設置されますが、沖縄のスーパー「サンエー」の広報担当者は「お歳暮商戦が本格的に始まるのはクリスマスが終わってから。ピークは正月三が日です」と明かします。
同じく沖縄のスーパー「リウボウストア」の広報担当者も「年末に駆け込みで買う方が多いです。重い物だと年始回りに行く前に購入される方も多いです」と話します。
まとめるとこうです。
■県外=12月中に宅配
■沖縄=正月三が日に持参
リウボウストアでは正月三が日を過ぎても「お歳暮ギフト」を扱っている店舗もあるそうです。売れ残った物をセールで売っているわけではありません。ちゃんとした理由があります。
それは「旧正月を祝う地域だから」。
沖縄には正月が3つあり、そのうちの一つ、旧暦の1月1日を盛大に祝う地域があります。
リウボウストアではそれらの地域の店舗ではお歳暮ギフトを旧正月まで売っているそうです。
◇年が明けて「お歳暮」?
本来「お歳暮」とは文字通り、お世話になった人たちに、年の暮れに贈る物。年が明けて年始回りに持って行くのは「お年賀」ですね。
沖縄県民が贈り物を持って行く時期は正月三が日が多い。それなら当然、商品に貼る「のし」は「お年賀」が多いはず。そんな仮説を立てサンエーに聞いてみました。
「のしは『お歳暮』の方が多いです」
広報担当者から返ってきたのは意外な一言。もしかして沖縄県民、年が明けても「お歳暮」を持って行ってない?謎は深まります。
◇贈り物が違う!
さて、沖縄県民はどんなものをお歳暮として贈っているのでしょうか。次の写真を見てください。
リウボウストアのお歳暮ギフトコーナーの一番目立つ場所に鎮座しているのはお米。
サンエー、リウボウストアとも「一番の売れ筋は『お米』そして、『ツナ缶』」と声をそろえます。
日本人の主食はお米。銘柄の好みはあるかもしれませんが、基本的にどの家に贈っても嫌がられることはありません。
ツナ缶は12〜15個入りの箱で売られています。ツナは沖縄の県民食「チャンプルー」に欠かせない。もらって重宝する一品です。
このほかにも「削り節」も売れ筋です。
沖縄県民は味噌汁のだしを鰹節で取ります。削り節も重宝する一品なのです。
サンエーにはこんなものも。
ツナ缶とポーク缶の詰め合わせ。沖縄の庶民の食事に欠かせない2品がそろった最強セットかもしれません。
一方、沖縄県民が県外の方に贈るのは少し事情が異なるようです。
沖縄で唯一の百貨店「デパートリウボウ」の売れ筋は沖縄そばやハム。そして沖縄にしかないブルーシールアイスクリーム。沖縄そばは「年越しそばとして食べてほしい」と贈る方が多いそう。
デパートリウボウの広報担当者によると、「あれもこれも贈りたい」と言って2、3点を1カ所に贈る年配の方もいるそう。お歳暮の「カメ―カメ―攻撃」ですね。
デパートでも以前はお米が売れていたそうですが、最近はハムやこだわりの商品がよく売れているそう。
お歳暮商戦のピークもデパートはスーパーより少し早く、「ボーナスが出る12月の第2週目の週末から」だそうです。
県外に住む家族や友人にふるさとの味やこだわりの品を心を込めて選び贈っている県民像が見えてきます。
◇仏壇に供える!
「沖縄に来て最初の頃は誰に贈るのか、その基準がよく分からなかった」と明かすウチナー嫁もいます。
県外と同じようにお世話になった人にあいさつに行くこともありますが、沖縄の人が年末、年始に訪問するのは、基本、仏壇のある家です。なので仏壇の前には十数個(多い家だと数十個!)のお歳暮が供えられます。そして、正月が終わると、いただいたものを親戚で分けます。
先祖崇拝の沖縄という地域性はここにも出ています。そしてみんなで分け合う「ゆいまーる」の精神も。
この取材のため、ギフトコーナーをじっくり見ましたが、魅力的な商品がいくつもありました。「これをもらったらうれしいな」「これはあの人に贈ると喜ばれそう」などと考えると、楽しくなってきました。
人気の商品から売れてしまうので、年末になると商品も限られてきます。
生粋のウチナーンチュの私。いつも年末に駆け込みでお米か鰹節を買うのですが、今年は早めにじっくり選んでみようかと思いました。