[E:note] 「新しくなった自分」が作る曲は、それまで作っていた作品と違ったんですか?
奥: それ以前の自分の曲と違うか? と言えば違います。作った曲というよりも、唄う気持ちがいちばん違うのかなぁ……。それまでの私は自信過剰で「私が一番!」くらいに思っていて、だからダメだったんですけど(笑)。根拠のない自信というんですか? だからこそ(5年間ライブハウスで歌うことを)続けられたのかもしれないですけどね。「ぜったい自分は大丈夫なんだ。ただ、みんなが私を知らないだけ! 」と思い込んでいました。今思うと、本当に恥ずかしいです(笑)。
[E:note] 何がきっかけで、「変わらなきゃ!」と思ったんですか?
奥: 出会いですね。今も私のプロデューサーですけど、その方と出会って「(あなたが)そんなにすごいんだったら、とっくに売れているんじゃないの!」と、キツイことを初めて言われたんです。けっこうズタズタになりましたよ(笑)、そんなこと誰からも言われたことはなかったですから。で、そう言われて気づいたのが「何でも自分、自分! 」だった私。自分がどう唄いたいかばかりを考えていたんですよね。そのことに気づいてからは、聴いてくれている人たちにどう聴こえているのか、どういうふうなものを求められているのか、と客観的に自分を見ることができるようになりました。その点がそれまでの自分といちばん違うところかもしれませんね。
[E:note] 相手にどう伝わるかを考えるようになったということですね。
奥: そうですね、こっちがこういうふうに唄っています! と言っても、相手がそう思えないときってあるじゃないですか、人間関係の多くはそうでしょ。それを、自分はそうしたくなくても、こうしたら伝わるんじゃないか? どうしたら伝わるか? ということを考えるようになりましたね。
[E:note] ガツンと言われたときは辛かったでしょうね。
奥: 毎日泣いてましたね。でも、デビューするにもふつうに考えて年もいっている、遅い、後がない……。そこで1回挫折して、路上ライブを本当に何もない状態から始めたときにメジャーデビューっていうことがどっちでもよくなったんです。自分のなかで意味が変わってきて、それよりも目の前の人が涙を流して感動してくれる顔を見たときのうれしさとか、そういうものが大切になっていったんです。そして、そんなふうに目の前のことに向かっていったら、気づけばデビューへの道が開けていたというだけで……。不思議だなあと思いますね。
[E:note] 作品も変わらないとはいえ、変わったのでは?
奥: そうですね、それまでの私は、今流行っている曲とか、どういうものが売れているのかとか、まったく興味ありませんでした。でも、曲作りを変えようと思ってからは、とにかく売れているものを全部買って、どんなものが聴かれているのか、以前よりもっと客観的に考えるようになりましたね。どういうサビがキャッチーなんだろう?とか。
[E:note] 以前の曲はあまり流行を考えてなかった?
奥: めちゃくちゃ長いものがありましたからね。全部で6分くらい、サビまで1分半、待てない!みたいな(笑)。そういう意味でも、路上ライブを始める前の私の作品は、自己満足的なところがあったと思います。それもいいところではあったんですけどね。
[E:note] 自分で作詞して作曲するという創作活動というのは、奥さんのなかで自然に入っていったことなんですか? 何かきっかけは?
奥: ピアノは5歳からずっとやっていて、音楽はずっと好きでした。高校のときに友達がギターで弾き語りをするのを見たときに、私もピアノで曲を作ろう! と思ったのがきっかけで、すごく自然でしたね。
[E:note] 歌詞はわりと自然にわきあがってくるんですか?
奥: まったく出ないですね(笑)。まったく生まれないので。
[E:note] まず曲ができてから詞をつけるという感じなんですか?
奥: そうですね、基本的にいつもメロディから先に作って、サビに合う言葉をさがしてパズルみたいに当てはめていくんです。音にいちばん響く言葉を当てはめて、そこから物語を作る、というのはだいたいどの作品も同じですね。