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America’s Got Talentの公式チャンネルより

 

米国のオーディション番組『America’s Got Talent』に、マンディ・ハーヴェイという女性が出場した。一見、どこも変わったところのない29歳だが、彼女はまったく耳がきこえない。

 

審査員席の隣に立った手話通訳者を通じて、ハーヴェイは自らの過去をこう語った。

 

「18歳のときに、結合組織病にかかってすべての聴力を失ってしまったんです。歌は4歳から歌っていました。きこえなくなった後も、私には音楽が残っていた。目に見えるものと自分の音程を信じて、マッスルメモリーで歌う方法を身につけたんです」

 

ステージに立つ彼女は靴を脱いでいたが、これは床を伝わる音の振動を足の裏でキャッチし、テンポを掴むためだと説明した。

 

披露したのは自身が作詞作曲したオリジナル曲「Try(挑戦)」。夢を追い続けることをやめない、という決意を込めた歌だという。

 

ベースとキーボードの伴奏を従え、ウクレレを弾きながら歌い出した彼女の透き通った声に、会場中が息を飲んだ。辛口と仏頂面で知られる審査員のサイモン・コーウェルも、驚きの混じった笑みを浮かべてハーヴェイのパフォーマンスに釘付けだ。そのうち、観客の多くが涙を拭い始め、「だから笑って、挑戦しよう」というサビで皆が立ち上がった。

 

満場のスタンディングオベーションを贈られながら歌いきったハーヴェイに、コーウェルは「これは、通訳なしでもわかるよね」と声をかけ、力いっぱいゴールデン・ブザーを鳴らした。この番組では4人の審査員のうち、3人が合格を出さないと次には進めないルールだが、ゴールデン・ブザーは1人が押せば即合格。相談せずとも、満場一致で合格することが確信されたときにしか押されない特別なブザーだ。

 

「言葉が出ない。長年、この仕事をやってきたけど、これほどすばらしいものは見たことも聴いたこともない。正直、人に驚かされたり感動させられたりすることなんてないと思っていたんだ。でも、君はやってのけた。君の声、歌、音程、すべてが美しい。おめでとう、次は生中継審査会だ」とコーウェルは最上級の賛美とエールを贈った。

 

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