泉谷しげるインタビュー 第1回 - こう見えても結構アニメとかコミック好き

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―よろしくお願いします。今回はアニメのテーマソングということで。

そうですね。まあ、自分の中ではアニメというよりは、もう、何だろうね、押井守さんの場合はもう芸術品ですのでね。だから、アニメという一つの範疇の中には、自分としてはないんで。まあ、前から好きですけどね。自分、こう見えても結構アニメとかコミック好きなんで(笑)。

―泉谷さん自体も昔やられてましたね。

そうですね。大好きなんで。だから、意外とこう見えても古臭いジジイじゃないんですよ(笑)、本当に。

―で、今回はまた押井守版『宮本武蔵』という、ある意味、世界的にも注目を浴びる作品だと思うんですけども。

そうだと思いますね。彼の着眼の面白さというのが、常に新しい事をいつも考えていて。前から俺も、時代劇みたいのやってくれないかななんてボヤっと考えてたら、まさかこれが来ると思わなかったんでちょっとビックリしたのと、まあ、オファーが来たこと自体驚いてたんだけど(笑)。なんで俺なんだろうなというのがあったんですけど。それでも、すぐ資料いただいたんですけどね。で、今日改めていろいろ話してみてわかったんだけど、やっぱり変わってますよねえ。宮本武蔵の宮本武蔵たる宮本武蔵じゃないですよね、やっぱりねえ。だから、ドキュメンタリー? アニメ・ドキュメンタリーつったほうがいいかもしんないですね。だから、切り口が全然違うところじゃないかなと思うんですよね。だから、『五輪の書』、こういうすごい日本人がいたという発想なんですよね。だから、ダ・ヴィンチみたいな人だとか、つまり今で言う秀でたるものの、それを追求してきた日本人のすごさで、彼はやっぱり戦略家であり、卑怯な勝負師でありというイメージだけでは片づけられない……何ていうの、一つの秀でたる、まあ、ダ・ヴィンチみたいにいろんな才能のある人なんじゃないかという発想だったみたいでね、そりゃ面白いなというのがありましたね、だから。

―ちょうど『五輪の書』を宮本武蔵が書いた年齢と同じ年で泉谷さんがこのテーマ曲を作ったことになりますね。

『五輪の書』!?(笑)、俺のギターとは何ぞやみたいな書かなきゃいけないのかな(笑)。ちょっと真似しないようにとしか言いようがないんだけど、そうかもしれないですね。

―『生まれ落ちた者へ』というタイトルなんですが、そこもやっぱり何か意識されたものはあったんですか。

これはねえ……やっぱりパッとそれが来た時に、まあ、個人的に宮本武蔵自体好きだったんだけど、押井さんだしね、こりゃただじゃ済まねえだろうなと
いうのはあったんで、本当にねえ、来た時は「うーん」とすごく一瞬悩んだんですけど五分で作りましたみたいな勢いで。まあ、納得してもらったんだけど……
アスリート、アスリートの気分? なんかこう……何か集中して何かを犠牲にしなきゃいけなくて、何かの喜びを失ったり、孤独なことをやんないとある高みに
行けないじゃないですか。だから、たまたま武蔵というのもそういうやつかもしれないって俺もちょっとボヤっと、まあ今日、押井さんと話した時は合致したん
だけど、じゃないのかなあみたいな。女と結婚してねえし。女嫌いと言ってしまえばそれまでなんだけど。そういう普通の人たちの喜びをちょっと断ち切って、
でもパワフルじゃないですか。だから、その時代のその尺に合わなかったんだろうな、この人は、みたいな。そういう、だから生まれ落ちてしまった自分のパ
ワーというかね、それをどうやって持て余さずにしていこうかってもがいてるやつではないかなという。だけど、いろんな欲望とかそういうのとも闘わなきゃい
けないし、そういうものに、まあ、アスリートと置き換えた時からパッとこう。

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―前作の『すべて時代のせいにして』をきっかけに、この『生まれ落ちた者へ』が一つのまた答えではないですけども、あの歌に対してまたこの歌が続いた?

それはもちろんありますし、やっぱり自分は人間讃歌でありたいし……あと、やっぱりその時代に合う合わないは別にして、その時代にもがいてる人々
の、その時代をやっぱりいじくろうと思ってますからね。だから、そこから避けるんではなくて、今そういう人たちはどういう気持ちでいるんだろうかとか、そ
の時代の――この時代というのは限定できないんだけど、こうだとは言い切れないんだけど、まあとにかく、ちょっといじっちゃってね、何だこりゃというふう
にやっぱりやっていくのがメッセージソングを作る人間の務めだと思うんだよね。だから、まあ、ポニキャンとますます社風の合わないこの方向へと、さっきも
笑ってたんだけど、そう言いながらも楽しんで作っていこうということですよね。

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