08年の監督・主演作『グラン・トリノ』で、事実上の俳優引退宣言をしていたクリント・イーストウッドが、再びスクリーンに登場。ベテランならではの渋い演技を見せている。監督を務めたのは、イーストウッドから17年にわたり映画製作を学んだ、ロバート・ロレンツ。
ろばーと・ろれんつ★
66年アメリカ合衆国生まれ。89年に映画業界へ。助監督を務めた『マディソン郡の橋』(95年)で初めてクリント・イーストウッド
と組み、以降『ミスティック・リバー』(03年)、『ミリオンダラー・ベイビー』(04年)など、多くの作品にスタッフとして携わる。次回監督作は犯罪ド
ラマで13年クランクイン予定。
映画『人生の特等席』
監督・製作/ロバート・ロレンツ
丸の内ピカデリーほか、全国公開中
(C) 2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
C)KaoriSuzuki
――本作が初監督作品ということですが、完成作をご覧になっての感想をお聞かせください。
「純粋に誇らしく思いましたし、でき上がりには満足しました。ご覧になってくださる方も、楽しめていただければと思います。こんなに素晴らしい体験は映画を作っていくうえで、2度とないかもしれません
――17年間、イーストウッドの元で映画製作をしていたということですが。
「もう18年目に突入しています。最初に『マディソン郡の橋』(94年)のスタッフとして加わり、それ以降のイーストウッドの作品には何らかの形で関わっています」
――今回の作品はイーストウッドが4年ぶりに主演にカムバックした作品ですが、これはやはり信頼を置いている監督の作品だからだったのでしょうか。
「そうだったんじゃないかと思いますね。だいぶ前から彼は、『俳優だけでは出演したくない』と公言しています。それはなぜかというと、自分なりに築き上げてきたスタイルや映画作りというのがあって、それが独特なものだからなんです。僕は、そんな彼の撮り方を熟知しているし、スタッフも彼にとっておなじみのメンバーでやれます。だから出演してくれたんではないかと
――監督から見て、イーストウッドはどんな人ですか?
「ワンダフル。素敵な人で、映画作りがとても大好きな人。『映画愛』があるという共通点があるからこそ、僕はとてもいい関係がつくれていると思います。彼の人生経験から学ぶことも多く、人間的にもすごく面白い人です。また、地に足のついた人だからこそ、いっしょに長くやれていきているという部分もあります
――作品は、野球をテーマにした父と娘の物語です。脚本のどういうところに魅力を感じたのか教えてほしいのですが。
「父と娘という人間関係に、いちばん惹かれました。最初に脚本が送られてきたとき、妻に読んでもらったら、自分以上に感動して『これは(映画を)作らなきゃダメよ』って言われて。彼女がそんなに強烈なリアクションを見せたのは初めてでした
――奥さんの強いひとことで決められた部分があるのですね?
「そうです。この企画がたくさんの人の心に響くということに自信が持てました。自分が気に入って、イーストウッドが気に入って、彼女が気に入ってくれた。野球というテーマは、女性よりも男性のほうになじみがあるものなので、最初はそこを気にしていたんですが、妻にも伝わったことで『これは大丈夫かな』と思えるようになったんです
――ちなみに監督自身は、娘さんはいらっしゃるのですか?
「7歳の娘がいます」
――彼女は、まだ野球には興味を持っていない?
「じつは、ソフトボールを始めて今年で3年目で、野球は大好きなんです。9歳の息子もいるんですが、彼よりも娘のほうが野球が好きなんですよ。今回、この2人は映画に出演しているんです。息子は『ミリオンダラー・ベイビー』(04年)に赤ちゃんの役で出演しているので、今回が初めてじゃないんですが、娘は映画初出演でした。待望の役者デビューをしたんです(笑)
――次の作品で、監督として携わる予定のものはあるんですか?
「13年に撮影に入ろうと思って、準備している作品があります。犯罪ドラマで、若い男性が主人公。詐欺師まがいのことをしてきた男性の話です」
――ということは、今回の映画とはテイストが違う感じの作品ですよね!?
「だからこそやりたかったんです。多様な作品を作れる監督でありたいと思うし、ひとつの作品のレッテルを張られたくないので、次回作は今作とは全く違う、かけ離れたものにしたいと思っています」
――では最後に、作品のPRをお願いします。
「とにかく見ていて、ポジティブになれる。ヘビーになりすぎずに見られる感動作だと思っています