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エメラルドグリーンの美しい海、そのそばで奮闘する人々……。東日本大震災で60㌫以上の世帯が被災した宮城県南三陸町で、地元の人たちが立ち上げたラジオ局「FMみなさん」の1年を追ったドキュメンタリーが公開中だ。おおらかな優しい響きで、ナレーションを担当するのは役所広司。町の元住人という目線で、様子を見守っている。

やくしょ・こうじ★

56年1月1日生まれ、長崎県出身。96年『Shall we
ダンス?』『眠る男』『シャブ極道』で、国内の14の映画賞の主演男優賞を独占。『うなぎ』(97年)『バベル』(06年)などで、国際的にも高い評価を
受けている。13年は三谷幸喜監督の『清須会議』、14年は小泉堯史監督の『蜩ノ記』が公開予定。

映画『ガレキとラジオ』

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監督/梅村太郎・塚原一成 
ヒューマントラスト渋谷ほか、全国順次公開
(C)映画「ガレキとラジオ」製作委員会
(オフィシャルサイト)http://www.311movie.com/

 

――南三陸町の街並みに、ラジオ局『FMみなさん』の奮闘、人々の物語……。それらに、役所さんの優しくて穏やかなナレーションがとても合っていて、印象的でした。まず、作品をご覧になっての感想をお聞かせください。
「自分たちも被災者であり、まだ心の整理がついていない状態であるにもかかわらず、街の人たちのために情報を発信しようと奮闘している『FMみなさん』の姿に、胸を打たれました。人のためにがんばっている人たちの笑顔って、こんなに美しいものなんだなと」

――町の元住人の男性、という目線でのナレーションでしたが、どういうことに気をつけられましたか?
「僕はあまりナレーションの経験がないんですけれども、潜ることなく、突出することなく、うまく映像に溶け込めればいいなと考えて臨みました。自分の中のテーマとしては『言葉で説明し過ぎず、センチメンタルになり過ぎない』ということでしょうか。明るくて前向きで希望を持てるものを作るんだという監督の言葉を受けて、がんばったつもりです。ヘッドホンから流れる、南三陸のさまざまな環境音を聞きながら、自分の言葉を話すことは、心地よくて楽しい作業でした」

――とはいえ、なかなか難しい役どころだったのではないでしょうか?
「たしかに。震災で、南三陸町でも多くの方々が亡くなりましたが、みんなが町の人々を見守っている。それは、町の力になっていくのではないだろうか。そういうことを考えましたね。ヘッドホンから聞こえてくる音で、自分が近くに行ける気がするんです」

――梅村太郎・塚原一成両監督からの熱烈なラブコールを受けて、無償でのナレーションということですが。
「こういう企画に呼んでいただいたことは、俳優としてすごくうれしいこと。震災が起きたあと、多くの俳優たちは、自分に何ができるんだろうと考え、それぞれ、できることをやってきました。今後もこのような企画があれば、積極的に参加していきたいと思います」

(同席した梅村太郎監督)「僕らは、役所さんがお持ちになっている、柔らかいけど強くて、人を包み込むような声が好きで。当初から、ナレーションは役所さん、と決めていました。それでラブレターをたくさん書いたわけですけど、映画が無事に完成するのかさえ分からない、早い段階から参加を表明いただき、感激しました。実際に台本を読んでいただくと、役所さんの声の質や温かさが、僕らの想像以上に映画の世界を表現していて。本当にお願いしてよかった。この先、10年、20年、30年経っても、この映画の“柱”になる声だと思っています」

――「FMみなさん」の9名をはじめ、いろいろな立場の住人が登場します。どなたが印象に残りましたか?
「娘と孫をなくしたリスナーの幸子さん、ほかにも登場するみなさんがいろいろな現実を背負っていて、全員が印象に残りました」

――震災のニュースも少なくなってきました。そのことについてはどうお考えですか。
「とても大きな災害でしたので、風化させないようにしないと。人間だから、忘れていくんですよね。でも、これは忘れてはいけないこと。こういう作品に触れることで、改めて震災について考えていただければ」

――最後に、作品に参加されての感想をお聞かせください。
「僕は、少しでも役に立てればと思っているんです。多くの方にこの作品を見ていただくことによって、それが何らかの支援につながっていくとか。参加した人間として、それほどうれしいことはないですね」

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