連載第39回 ニューヨーク熟女が目指す年下婚!
日本では派手なイメージが先行するアメリカ人チアリーダーたちですが、アメリカでクラスメートにチアリーダーがいたならば、彼女たちがとても地道な性格である場合が多いという事実に必ずや気付くものです。その意味では、ニューヨーク熟女たちは〝大人の街ニューヨーク〟を代表する美人チアリーダーとも言えるのです。
当地ウォール街の常識として、ニューヨーク熟女たちの信念を一言で言えば、「常に今の仕事人生の延長線上にい続けて、日進月歩を目指したい」であると、国際弁護士ユアサは明言します。
そんなニューヨーク熟女の知的な最新トレンドは、なんと「年下婚」なのです。
日本でも、スローペースで熟女年下婚が伸びてきている兆候はあるものの、まだまだアメリカの伸び方には及びません。以前も当ページで述べたように、アメリカ社会では長年にわたり、男性が70代や80代でも数十歳もの大差の年の差婚が当たり前なのですが、ここのところ、年齢差のある「熟女年下婚」もかなり急速に増加してきていると言われています。
事実、ユアサのアメリカ人の友人知人たちの間でも、熟女が年下のイケメンと結婚に至るケースが増えています。そして、彼女たちから「私の結婚パーティで歌を歌って」というリクエストがユアサにはかなり押し寄せています。
様々な機会にどうやって年下男性をゲットできたのかを尋ねると、あるパターンがあることに、ユアサは気が付きました。
まず、出会いの場。日本では合コンや友人の紹介の場合が多いかもしれませんが、ニューヨークでは、最初に熟女から声をかけるパターンも多いようです。
これは今に始まったことではなく、ニューヨーク熟女の代表選手というべきヒラリー前国務長官は、四十数年前、まだ夫妻が互いに独身の時代に、学生として学ぶ法科大学院の図書館で、彼女のほうからずかずかと近づいていき、ビル・クリントンに初めて声をかけたのでした。ビルのほうがビビったくらいのヒラリーの勢いだったといいます。
しかし、アメリカ社会は犯罪社会でもあるので、ヒラリーのように、あらかじめビルが非常に正義感あふれた人物であるとわかっていなければ、女性の側からの声かけは危険極まりないのです。
そこで、熟女の親友熟女の出番となるのです。これは親友熟女の眼力がモノを言うので安全です。中間に仲人的な親友熟女が存在しているので、日本的に言うと、ほんの少しお見合いの香りがします。しかし、日本のお見合いでも、よもや女性サイドからいきなり声かけすることはまれでしょう。
その声かけも、ニューヨーク熟女の場合はパターンが豊富で、お互いのことを話すよりも、なにか客観的なモノやトレンドなどに対する意見を年下男性に聞きます。その最大の理由は、特に彼がイケメンの場合、〝口説かれベテラン〟であることが非常に多いからです。
アメリカ人イケメン男子は原則として、努力をしなくとも、アメリカ人女性が非常に積極的にアプローチしてくるので、女性から攻めてくるパターンにも慣れっこになっています。
ですから、海千山千のニューヨーク熟女は、素知らぬ顔でまずは客観的な話題を持ち出します。人の相性というのは言葉のキャッチボールさえすればわかるので、話題に気を使わなくてもよいというのが、ニューヨーク熟女の合理主義なのです。
自分との相性がよくないなら、いくらイケメンで魅力的でも、トータルの得点はマイナスとなる訳です。これが、ニューヨーク熟女の器の大きさです。イケメンなんてアメリカでは掃いて捨てるほどいる、という言葉を、知人のニューヨーク熟女たちから、ユアサは何度聞かされてきたかわかりません。
ユアサの知人で、かなり年下の男性と最近結婚したニューヨーク熟女は、初めての出会いの場として、とある凍えそうな冬の日の、マンハッタンからだとイーストリバーをこえたブルックリン内に位置する公共文化施設を選んだと言っていました。
ニューヨークは、基本的には東京と気候が似ているのですが、冬は日本の雪国よりさらに冷え込む日もあります。天気予報キャスターも本格的に寒い日には「顔でも手首でも一切露出するな! いや、それどころか、万が一外へ出たら、大至急で別の建物へ移動するか、さもなければ、体感温度だと、摂氏でマイナス20度ぐらいにもなるから、外出するな!」とまくしたてたりするほどです。東京で身につける程度の冬服では、寒い日は全く対応できません。
そんな外に出たくないような極寒の日でも公共施設内は室温も適度で心地よく、年下男子の立場になってみると、もし熟女の機嫌を損ねてしまい、万が一外へ追い出されたら大変なことになるので、〝口説かれベテラン〟のテクニックも全部忘れ、必死で会話を盛り上げようとするのです。
こうした場合、ニューヨーク熟女は年下男性に、兄弟がいるかどうかを必ずといっていいほど尋ねるようです。姉妹より兄弟がいるかが、チェックポイントなのです。
ニューヨーク熟女によれば、最大の理由は、仲が悪い兄弟が日本社会などよりもずっと多いのが、アメリカ社会の特徴だからだそうです。
前述した結婚に至ったニューヨーク熟女の場合、親友熟女の仲立ちの親切へのお返しとして、花婿の兄を紹介してそちらもめでたくカップルとなり、間もなく結婚する運びだと、結婚パーティで歌を歌うために招かれたユアサに教えてくれました。
なるほど、ユアサには「仲が悪い兄弟が多いから」とか言い訳していたニューヨーク熟女や親友熟女は、年下男性のみならず、その兄弟をまるごとターゲットにしていたようなのです。正直、あっけにとられました。
日本の若者の合コンスタイルは、時にお互いの相性の判断よりも、アメリカの若者ドラマのように男女の情念が先行する感じで、それではお互いに仕事的にも人間的にも高め合い、励まし合うものが薄いのでは? と言うのが、ニューヨーク熟女の感想なのです。
人の生き方は、実は振り返るとみんな似ていて、寒風吹きすさぶ凍てつく外気の中で連帯感という温かい雰囲気を大切にしながら、お互いに頑張ることだというのが、ニューヨーク熟女の教えであると、国際弁護士ユアサは推理します。
ニューヨーク熟女たちは、このことをこれまで生きてきた経験から悟ったのではなく、昔から気が付いていたのだと、長年のアメリカ社会での経験からユアサはにらんでいます。
熟女年下婚での年齢差が十歳差か何十歳差かの違いは、彼女たちにとっては、紅茶にミルクかレモンかの世界に過ぎません。
年齢差については、「地球上のすべての人間にとって、今現在の1秒は同じ1秒である」という事実こそがニューヨーク熟女たちの信念なのであり、まったく気にもかけていないと国際弁護士ユアサは断言します。
しかし、年下婚を、秒単位で考えるのはナンセンスという反論が生じれば、ニューヨーク熟女には奥の手の信念がさらにあります。それは「リタイア人生でなく、リスタート人生を!」というものです。
日本で言う「リスタート(再スタート)」には、人生をやり直す感じが伴います。しかし、年下婚は人生のやり直しではなく、あらためてロケットスタートするという意味なのです。まさしく「熟女年下婚」=「ロケットリスタート婚」であるのだと、ユアサは分析します。
ロケットリスタートは、今現在のニューヨーク熟女の仕事人生の延長線上にあります。
しかも、そこに至る道のりが熟女たちのここ一発の離れ業などではなく、しっかりと地に足が付いた、親友熟女との長い歳月を共にした人生のタッグの成果なのである、とユアサは感じる次第です。
(了)