湖月わたる 舞台『愛と青春の宝塚~恋よりも生命よりも~』でリュータン役を熱演中!
宝塚星組トップスター退団後5年。まだまだ、バリバリにかっこいい湖月わたるさん。第二次世界大戦中の宝塚歌劇団を舞台に、時代に翻弄されながらも強く生きぬくタカラジェンヌたちの姿を描いた舞台『愛と青春の宝塚~恋よりも生命よりも~』(東京・青山劇場にて2月27日まで)で、ジェンヌたち憧れのトップスター・リュータン役を熱演中だ。08年の初演では、11万人を感動の涙で濡らした人気ミュージカル。その見どころと、宝塚秘話、Wキャストの真琴つばささんの素顔などを語ってもらいました。
(インタビュー)
Q 湖月さん演じる宝塚歌劇団のトップスター・リュータンは、大のすき焼き好き♡。スキヤキソングという「スキ~ヤキ♪ これこそ日本の宝♪…」と、コミカルな歌詞に乗って、大胆な踊りをするシーンが、今回はよりバーションUPしたそうですが?
A この舞台は、史実に基づいたお話なので、1幕の後半から、ぐっと戦争色が出てきます。その前に、タカラジェンヌが一番キラキラしていたとき、輝いていたときを表現したい、と思って、初演(08年)よりもさらに、タカラジェンヌみんながキラキラした笑顔になるようにバージョンUPして、コミカルさを強調しました。演出家の鈴木裕美さんから「その日のテンションを存分に出していい」と言われたので、私のご機嫌ぶりを楽しんでください(笑)
Q 最後の焼け野原のシーンで、もんぺ姿でラインダンスを踊りますね
A はい。ラインダンスは、どんなスターの方でも、誰でも通る登竜門的なダンスです。今回のメンバーは、新しく参加した人もいますし、みんな年齢も違いますが、すぐにピシっと揃ってしまうところが、タカラジェンヌの“絆”なんだなあ、と思いますね。
「同じ釜の飯を食う」ってよく言いますけど、話したことのないコたちと、「宝塚出身なの?」「そうなんだ」って、同郷や、同じ大学出身者のように、一つの絆というもので、わかり合えたりするんですよね。すぐに会話も弾んでしまうので、不思議なものです。
でも、そういう絆を持っているって、とても幸せなことで、退団して個人で活動するようになると、そういう仲間がいてくれるとすごく頼もしいんです。
今回の作品も、たぶん一人では乗り越えられなかった時代の物語。みんなで手を繋いで頑張って行こう! みんなで頑張れば、越えられない苦労はない! と気づかせてくれる。もちろん、今も大変な時代。自分のなかに苦悩を押し込めてしまう人も多いんじゃないかと思いますが、こういう時代だからこそ、この作品のように、人と人とが、助け合って生きていくべきじゃないでしょうか。
この作品を観て、家族や友達、自分の周りにある大切な絆を、思い出してもらえるといいですね。
Q 宝塚というと女性ばかりの社会。何かと人間関係は複雑そうに思えますが…
A そんなことないですよ。すごく楽しいです。作品のなかでもそうですが、リュータンは後輩たちにとても厳しく接します。稽古場で怒ったりもしますが、その後にはスキヤキ屋さんに連れて行って、みんなで美味しいお肉を一緒に食べます。楽しいだけじゃなく、厳しさのなかに楽しさがある。楽しいだけじゃ、それが当たり前になってしまうので、厳しさがあって、初めて楽しみが味わえるんじゃないでしょうか。それが集団の良さなのでは、と思います
Qそんな姉御体質なリュータンと、湖月さんは似てる部分はありますか?
A はい。前回以上に、親近感を感じています。私も、宝塚でトップ経験がある。時代は違うけれど、私も、後輩たちに「飲みに行こう!」ってご機嫌で誘うタイプです。給料日前には必ず「行こう!行こう!」って(笑) それに、舞台に関してはまっしぐらになってしまうので、つい、後輩に厳しくしてしまうところも似ていますね。違うところは…、退団後、私のところには王子様が迎えに来てません(笑)
Q娘役の“とも”が、「舞台の上で死にたい」と望んだとおりに最期は舞台にいるかのようにお芝居をしてあげるシーンが涙を誘います
A.彼女が「舞台の上で死にたい」っていうその思いが胸に突き刺さるんですよね。脚本家の大石静さんは、さすがわかってらっしゃいます。同期との絆ももちろんあるんですが、相手役とは、また違った絆があるんです。トップコンビにしかない絆が。毎日、手を繋いだり、抱きしめたりする芝居をするなかで、あれ、今日はちょっと体温が高いな、とか、どうして今日はこんなに感動して泣いているんだろう… と、他の人では気づかないちょっとした変化もわかるようになるんです。そんな絆で結ばれている娘役からの要望は、何としてでも叶えてやりたい、と思うのは男役としては当然の思いなんですよね。
Q 演出の鈴木裕美さんのしごきがすごいと噂ですが、特にすごかったのはどのシーンですか?
A.全部です(笑)。今回の舞台は、主要メンバーをたてていますが、みんな一人一人場面によって、主役を演じているんです。みんなが懸命にキラキラして生きていてほしいという思いの詰まった作品なので、裕美さんの気合もすごく入っています。踊りの手の動きひとつにも、細かく指導が入ります。
私の場合、初演のときは、まだ退団して2年半くらいだったので、男役に戻るのは何の苦労もないだろうな、と思っていたので、女性の部分が上手く出せるか、と苦労しましたが、今回はそれから2年経って、女優の経験も積んでいたので、逆に男役を忘れてないかと心配していたら、とんでもなかったです。裕美さんは、「かっこよく魅せることは考えなくていい。そこじゃなくて、可愛い部分、女の部分を見せなきゃダメだ、ということを考えて」と。まだまだ女優の仕事は難しいですね(苦笑)。
今回は男役を意識していい作品なので、女優のときに封印していたものがたくさん出てきてしまうんです。日常生活でも、気が付くとポケットに手を入れてますし、足を開き気味で座ったり、手を顔のところへ持っていったり…と、男役のポーズになっているんです。フフフ、癖なんですよね。顎に手を当てて頬杖ついたり、仁王立ちしちゃったり(笑)。
Q リュータン役は真琴つばささんとのWキャストですね
A.在団中は組が違ったので、がっつりお仕事するのは今回が初めてなんです。最初にお稽古場でお会いしたとき、スタイルも雰囲気も現役のときとまったく変わっていなくて、「ワー!すごいな」という印象でした。退団してもう10年も経っていらっしゃるのに、素晴らしい!と。楽屋でも、すごくエンターテインメントな方で、リュータンのはっちゃけている部分など、いっぱい刺激を頂きました。普段からすごく盛り上げてくれる方で、お稽古場のムードメーカー的な存在で、すごく気配りのある方。いろいろ勉強させていただいています。演技の面では、とても細かいところまで気が付く方なので、新たな発見をさせて頂いたりして刺激もたくさん受けます。それがWキャストの良さですよね。逆に自分の在り方も見えてくるので。
「スキヤキソング」とか、自由な場面では、2人の個性の違いが出ていると思いますが、特に違うシーンがあります。好きになってしまった脚本家へうどんを持って行くシーン。ここは2人の個性の違いがかなりあります。うどんを持って、ただ、舞台を突っ切るシーンと、その後、その脚本家のコートを片付けるシーン。どう違うのかは観てのお楽しみ、ということに。それぞれの個性を存分に出しました。見比べるのが楽しいと思います。Wキャストならではのお楽しみですね
Q 新入生が上級生から「直角に曲がれ」「上級生を見下ろすな」「釘で板目を掃除しろ」と指導されていますが
A.本当です。私が在団中は全部ありましたよ。正確に言うと、時代によって規則も変わっていると思うので、戦争中はなかったかもしれませんが。「直角に曲がる」というのは、上級生とぶつからないように端を通りましょう、という意味ですね。みんな、端っこを通っていたので、壁に服の擦れた後がついていました。「見下ろすな」というのは、上から挨拶しない、という事。もし、上級生より上にいてしまったら、気づかない振りをして、降りて行って挨拶をしていましたね。
私は、舞台だけに憧れて15歳で宝塚に入りました。まさか、毎朝1時間半も掃除をするとは思わなかったので、ビックリしましたね。裸足でダンスのお稽古とかをするので、釘で板目の間のゴミを取ったり、トゲも危ないので、やすりで削っていました。今は新しい校舎になったので、板張りじゃないかもしれないので、やっていないかもしれないですけど。
Q 2014年で宝塚百周年です 湖月さんにとって宝塚とは
A.青春です。15歳から20代…、一番いい時期、青春を捧げた場所。劇中歌に♪永久に輝け宝塚♪って歌詞がありますけど、本当に辞めてみて改めて「永遠に光輝いてほしい」と思います。長い歴史が続いてきたのは、バトンタッチがある、ってこと。舞台でも、リュータンがタッチへトップの座を引き渡しますが、その時代、その時代、一番輝く時期、「私の世代が一番よ☆」という思いでみんなやって来たと思います。百年という長いリレーの、バトンを貰って、自分がちゃんと完走して、次の世代に渡せた、ということにすごい誇りを持っています。
Q 後は王子様だけですね
A.私の王子様は、どこで道に迷っているの?私はここよ(笑)。
理想は、この大きな私をすっぽり包んでくれる人。身長はあるに越したことはないですが、お相手が気にしなければ、身長何センチの方でも大丈夫です。
キラキラしていて、仕事に情熱を持っていて、誇りを持っている人。話をしているとき、目がキラキラしていると、素敵だなあ♡と思ってしまいます。そんな方と熱く語り合えたらいいですねぇ。リュータンみたいに、披露宴をスキヤキ屋でやってくれるような人? いいですね、ぜひ(笑)。そうなると座敷ですね、今時ないですよね、ハハハハ。