1月26日に開幕した通常国会で、消費税率を2015年10月までに、現在の2倍の10%にまで引き上げることを表明した野田桂彦首相(54)。だが民主党関係者によると、「野田首相は口にこそ出していないが、3年後の消費税10%への増税は、5年後に15%へ増税するためのステップだと考えている」という。
もともと消費税率のアップには消極的だったという野田首相。そんな彼を変心させた裏には、内閣府が作成した“極秘文書”の存在があった。『経済財政の中長期試算』と題された、A4版15ページにわたる消費税増税のシミュレーション資料。本誌は、この極秘文書を入手した。
文書に基づく予測によれば、消費税を2018年まで段階的に15%まで増税しても、国の借金が減ることはなく、日本の財政悪化は止まらないことが示されている。作成されたのは1年以上前の鳩山政権時だが、鳩山元首相たちはそのデータを公表しなかった。政治部記者によると、内閣支持率を維持するために彼らは、赤字の公表や増税の問題を先送りにしたのだという。
「消費税が15%でも赤字が続くという試算を見た野田首相は『自分は無知だった。このままでは日本の財政は破綻する』と周辺に漏らしたそうです。さらに『増税を掲げると選挙が厳しくなるが仕方がない。増税をやり抜くしかない』と、財政再建への強い意欲を示したそうです」(前出・民主党関係者)
官邸スタッフによると、「野田首相は『消費税10%は最低必要な数字。2018年から2020年にかけて、経済状況によっては15%から18%への引き上げは十分にありうる』という考えです」とのこと。しかし、そもそも野田首相に「消費税15%超」を決意させた内閣府作成の“秘密文書”について、第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏はこう分析する。
「この試算には大きな問題があります。内閣府は大前提として、現行の社会保障のレベルを維持して、最低保障年金などでさらに拡充するという、“大きな政府”路線を追認する姿勢があります。コスト意識を低下させたまま、さまざまなサービスを維持する“大きな政府”路線が、これ以上、無制限に拡大すれば、たとえ消費税率を引き上げることができたとしても、財政再建は成功しません。10年後にこれだけの赤字が出ることは当然でしょう」