民主党がマニフェストに掲げた「新年金制度」という年金改革案は、国民、厚生、共済の各年金を一本化し、全国民が同じ制度の年金にはいるというもの。この制度は、保険料を十分に払えなかった人にも月額7万円の最低保証年金を払うというもので、その財源は「全額を税金で賄う」というのが骨子となっていた。
しかし野田桂彦首相は、その新年金制度の財源についての試算を公表しないと発表。なぜなら、昨年3月に厚生労働省が作成した試算によると、消費税を10%上げただけでは財源には到底足りず、さらなる増税が避けられない見通しになったためだという。
「月額7万円の最低保証年金の全額を税金で賄うとすれば、2075年度に、最大61.3兆円の財源を必要とする試算内容です。これは消費税率に換算すると11.2%の増税が必要となります。この年金試算では将来の数値はどれも予想だったため、民主党の議員からは『景気がよくなれば、税収が増えるから増税は抑えられる』という声から、『50年くらいあとの話。そのときの状況なんて誰も分からない』といった無責任な意見も出ました」(民主党関係者)
今回、野田首相が試算の公表を渋ったのも、この試算があまりにも杜撰なものだったからだ。別の民主党関係者もこう続ける。
「新年金改革案が策定された当初から、民主党では肝心の財源について目を向けていませんでした。制度の移行が終わる2060年以降の財源については『何とかなるだろうし、そんな先のことは知ったことではない』ということなんです」