不朽の名作映画『ローマの休日』の舞台版が、大阪と東京で再演される。舞台版では新聞記者がシナリオライターに、報道カメラマンがスチールカメラマンに置き替えられ、それぞれを吉田栄作(43)、小倉久寛(57)が扮する。菊田一夫演劇賞を受賞した2年前の初演(東京公演)では、千秋楽でのハプニングが吉田栄作の記憶に鮮明に残っている。
「小倉さんが、演技で吸った煙草を消すとき、火種をズボンの裾の折り返しに落としてしまって。それでも気づかず芝居を続けていたんです。僕は見えてなかったんですが、『なんか煙臭ぇな』と不審に思っていました。すると、最前列のお客さんが『小倉さん、ズボンの裾! 燃えてる!』って小声で叫んでる。それで大ごとにならずにすんだんです」
あわや! という局面を切り抜け、カーテンコールを終えて戻った矢先、マネージャーが飛んできて、「再演の打診があったけど、どうする?」と聞かれた吉田。
「そりゃ、うれしかった。でも、まだ汗すら拭いてないんだから、考える余裕なんてないですよ。ただ、舞台用の特注した電動スクーター『ベスパ』も、『真実の口』のセットも、これで処分じゃもったいない。だからとりあえず『YES……かも』って答えました(笑)」
登場人物は3人だけというシンプルな舞台だが、今回、アン王女は荘田由紀(29)と秋元才加(23)のダブルキャスト。吉田にとっては2人とも初共演だ。
「映画でもグレゴリー・ペックとエディ・アルバートの息の合ったコンビに、新人のオードリー・ヘプバーンが加わったそうです。映画みたいな初々しいリアリティを表現できるかなって、期待してるんですよ。大先輩の小倉さんは、初日に合わせてセリフを頭に入れ、役柄の気持ちを作り上げてくる。まさに尊敬すべき舞台人です」