「ボクは世界でいちばん幸せな父親やと思います」と話すのは、子どもが全員揃ってロンドン五輪五輪代表に選ばれるという奇跡を起こした、体操・田中3きょうだいの父・田中章二さん(62)。

男女合わせて10人しか出場できないロンドン五輪・体操に、田中和仁(27)、理恵(25)、佑典(22)の3きょうだいが出場する。もちろん、これは日本体操史上初の快挙だ。

自らも元体操選手で現在、県立和歌山北高校や地元の体操教室で子どもたちの指導に当たっている父・章二さんは、「体操は素質3割、努力7割」だと言い切る。だが、「無理やりやらせても嫌いになるだけですから」と子どもたちに体操を無理強いすることはなかった。

スポーツ選手の親にありがちな熱血ではなく、子どもの自主性を重んじ、耐えて堪えて、静かに見守り、陰で支える育て方が奇跡の田中3きょうだいを育んだのだ。そんな田中きょうだいの家には3つの験担ぎがある。

【その1】節句のひな人形、武者飾りは片づけるべからず。

【その2】国立代々木競技場では女神の椅子に座るべし。

【その3】母・誠子さん(51)は試合の応援に行くべからず。

「3人ともすごくいい演技ができたときの験担ぎで、4年間、節句の人形を出しっ放しにしていたんです。片づけるのは、ロンドンが終わったときかなとは思っていますけど。正月もクリスマスも出しっ放しで、理恵はもう嫁に行けんでしょう」

そう冗談めかして章二さんはいう。だが、巣立つ子どもたちの背中を見送るのはやはり寂しそうだ。昨年秋、和仁が結婚した。章二さんの携帯にはカラフルなストラップがついている。

「和仁が母の日と父の日に、5色のオリンピックカラーのビーズで作った携帯ストラップを贈ってきてね。ふだんはこんなものつけないんですけど、嫁とお揃いなもので」

深い愛情に包まれ育った3きょうだいは、家族全員の夢を背負いロンドン五輪で頂点を目指す。

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