日本のみならず、いまや世界中で大人気の『ベルサイユのばら』が、連載開始から40周年を迎えた。そこで今回、『ベルばら』の生みの親・池田理代子さんに、今だから明かせる当時の裏話を語ってもらった。
「実はマリー・アントワネットを描きたいと打ち明けたら、編集部に大反対されて……。女・子どもに歴史ものはNG。絶対こけるっていうジンクスがあったんです。あの当時、少女漫画にあった3つのタブーが”歴史もの・神話・SF”。でも、担当の編集者さんががんばってくれたのもあって『絶対当てますから!』って言い切りました。『当たらなかったら、すぐ打ち切りですからね』って言われましたけど、絶対面白いもの。考えただけでワクワクしてましたからね(笑)」
アンドレとオスカルが結ばれるベッドシーンが、当時センセーショナルな話題となったが——。
「実は少女漫画初のベッドシーンだったんですよ。PTAのお母さんたちから編集部に『何事だ』っていうクレームがありました。そのときの編集長がえらい人で、『そこに至るまでを全部お読みになりましたか? 最初から全部読んで、それでもあのシーンが不必要だと思ったなら、また電話してきてください』って言ってくださったんです。そしたら、2回目の電話はかかってきませんでした」
実は編集部から「オスカルが死んだら、10週で終わりにしてください」と、池田さんは言われていたという。
「私ももうちょっと描きたかったのですが、このときすでにオスカルは34歳。このまま生きてちゃ困るかなって(笑)。当時の女のコたちは計算して、『オスカルってもう34歳なんですね。けっこうオバサンなんですね』って言われて(笑)。アンドレと結ばれて、生き延びても、あるときオスカルが『やっぱりこんな貧しい暮らしはヤダ』って思うかもしれないとか考えたら、ねぇ(笑)」
オスカルが死に、日本中の読者が泣いた(ちなみに彼女の血液型はA型だという)。
「仕事で地方の本屋さんに行ったときに、高校生たちが5~6人で『なんかヤバいのよね。オスカルが死にそうなよね。革命も始まっちゃったし』って話してるのを立ち聞きしたんですよ。ちょっといたずら心だしちゃって、『来週死ぬから』ってコソッと言ったんです(笑)。もちろん、作者だと名乗らずに(笑)。それから、女子高の先生からの手紙が来て、ある日教室に入ると、クラス中が暗い雰囲気だったんですって。それで『なんなんだ』って聞いたら、『オスカルが死んじゃった~』って。全員が泣きだしちゃって大変だったって」
本来『ベルばら』は、小学校高学年から中学生のために描かれたが、高校生や大学生、さらに男性にも読まれた。
「連載時には、月に2万通くらいはファンレターが来てたんですよ。オスカルが死んだときは倍くらいあったんじゃないかな。とにかくすごかった。抗議の手紙とかもたくさんあって、『生きる望みがなくなりました』とか……。ベッドシーンは、意外にみんな好意的で、抗議はPTAのお母さんだけでした。あと、ロザリーが嫌いっていう手紙もありましたね(笑)」