「『深層崩壊』とは、大雨などをきっかけに、山間部で山の斜面が表層の土の部分だけではな
く、地中深く岩盤から崩壊する規模の大きな崩壊現象のことをいいます」と、解説するのは土
木研究所の石塚忠範上席研究員。
9月10日、国土交通省は『深層崩壊』発生の危険性が特に高いと考えられる地図を発表し
た。昨年9月、紀伊半島を襲った台風12号では、『深層崩壊』により、大規模な土砂崩れが
相次いで起こり、住宅が倒壊、川がせき止められたりしたのも記憶に新しい。
奈良県だけでも五條市大塔町や、十津川村など54カ所で『深層崩壊』が発生。隣りの和歌山
県とあわせて”土砂ダム”と呼ばれる天然ダムが17個形成された。そのうち5個の天然ダムは、
決壊すると下流の住宅や住民に被害を与える危険性が高く、現在、国による対策が進められて
いる。
「深層崩壊は決して新しい現象ではありません。明治時代にも奈良県十津川村で巨大な深層崩
壊が20カ所以上発生し、崩壊土砂量が、1.4億立方メートルと東京ドーム約10杯分になったと
いわれています。ここ十数年は毎年のように豪雨と地震により発生しています」(石塚上席研
究員)
今回発表された最新地図は、これまでに発生した深層崩壊の跡地の分布状況から、深層崩壊の
危険性が特に高いと考えられる地点をまとめたもの。これまで22カ所以上発生しているエリ
アは『特に多い』。11〜20カ所は『多い』。1〜10カ所は『低い』。0カ所は『なし』とな
っており、『特に多い』エリアは福島県、栃木県、群馬県、新潟県、富山県、福井県、山梨
県、長野県、岐阜県、静岡県、三重県、奈良県、徳島県、愛媛県、高知県、熊本県、宮崎県の
17県。
そのなかでも、深層崩壊の跡地が『特に多い』危険性が高いのはつぎのとおり。【栃木県那須
連山・帝釈山周辺(福島と栃木の県境)】【南アルプス赤石山脈(静岡県側)】【飛騨高山
(富山県側)】【四国山脈(徳島と高知の県境)】【愛媛・高知の県境周辺】【九州山地(熊
本と宮崎の県境)】【紀伊山地】。
9月に入り、台風シーズンも間近に迫っている。あなたの町は大丈夫?