自民党の圧勝で安倍晋三新総理(58)が誕生することになった。思いきったデフレ政策を主張している安倍総裁。選挙中から金融緩和、円安誘導など経済再生への具体策を口にしてきた。その政策は、私たちの家計にどんな影響を及ぼすのか、緊急調査した。
経済アナリストの森永卓郎さんは「給料が上がる業種」をこう予測する。「円安になることで輸出が伸びるので、自動車業界は好調になるでしょう。さらに株価が上がることで銀行、証券も業績向上、今後は給料のアップが期待できますね」
安倍総裁は選挙前の『国家強靭化計画』で、今後10年間に200兆円を道路やダム建設などの公共事業に使うことを主張してきた。経営評論家の片山修さんによれば、この公共投資の多くが建設業界に流れるという。「建設業にとって、この200兆円の投資は実現すれば夢のような話です。業績も回復し、給料も上がることが予想されます」
安倍政権での円安が進めば、今までは円高に苦しんでいた多くのメーカーも一息つけそうだ。「電機はソニーやパナソニックなど、今までは円高の影響で中国や韓国の企業に価格競争で負けてきました。その経緯から見ると、円安傾向が続くのであれば、今まで負けていた分、少しは挽回できるのではないでしょうか」(前出・片山さん)
一方、円安が進むために給料が下がってしまうという業種も少なくない。前出の森永さんはこう指摘する。「安倍総裁が金融緩和をすすめることで、投機マネーが小麦や石油に集中することが予想されます。円高を進めることで購入代金が高くなり、投機マネーが流れこんで価格がつりあがることにダブルパンチとなって、小麦の価格は暴騰するかもしれない。日清製粉や山崎製パンなどの食品業は大打撃が予想されます。当然、給料にも響くことになるでしょう」
スーパーやコンビニ、百貨店などの流通や小売りも苦戦が予想される。「コンビニや百貨店などの流通業界では、インフレが起これば商品の価格が高くなり、消費者離れを引き起こすことも考えられます」(前出・片山さん)
円高の恩恵を受けてきた日本マクドナルドや吉野家などの外食チェーンも大ピンチを迎えそう。「100円マックや牛丼店の低価格競争など、円高を背景に安い価格を維持して売り上げを伸ばしてきました。しかし円高が続くと、安値で輸入していたものが割高な原価で購入しなければならなくなる。10円の値上げにもお客は敏感です。値上げもできずに、円安で利益が減り続ければ、給料も下がっていくでしょうね」(経済部記者)
福島第一原発の事故以後、東京電力をはじめとする電力業界にも逆風が続いている。「各電力会社は原発を稼働させていないので、発電のエネルギーは石油や液化天然ガス(LNG)に頼っています。原発の停止後は特にLNGの輸入が急増し、価格の高騰を招いています。これらのエネルギーは海外から輸入するので、円安になればその購入コストは跳ね上がる。かといって、電気料金を値上げすることには大きな反発が予想されます。利益を削り赤字決算が続くこともあるでしょう」(経済ジャーナリスト)
新内閣の景気回復策が、私たちの暮らしを無視したものにならないことを願いたい。