「仕事を始めるのはお昼ご飯を食べてから。午前2時までには切り上げようと思うんですが、気がついたら明け方ということもよくあります。睡眠時間は平均すると5時間くらいかな。だから美容にはよくないですよ。”大河”の仕事を始めてから、どんどんやつれていっているような気がします(笑)」

こう語るのは、今年のNHK大河ドラマ『八重の桜』の脚本を担当している山本むつみさん。彼女は’04年、『御宿かわせみ』(NHK総合)でテレビドラマの脚本家デビュー。’10年には、高視聴率を記録したNHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の脚本を担当して脚光を浴びた。

「NHKから大河ドラマのお話しをいただいたのは『ゲゲゲの女房』が終わった年の暮れでした。その時点では何をやるかはまったく白紙で。会津藩砲術師範・山本権八の長女・八重をヒロインにしたドラマにすることが決まったのは、東日本大震災のあとでした」

東日本大震災で被災した人たちを励ますドラマでもある『八重の桜』には原作はない。すべて山本さんのオリジナルだ。山本さんは、あらためて登場人物に対する思いをこう明かす。

「八重は2度結婚していますが、彼女が生涯敬愛していたのは兄の覚馬と会津藩の殿様・松平容保だったのではないでしょうか。最初の夫・川崎尚之助と2人目の夫・新島襄も、もちろん深く愛していましたけれど、同志のような存在だったと思うんです。八重に限らず、登場人物うは私の心の中で生きています。だから、彼ら、彼女らの心中を思い、書きながら泣くというより号泣してしまうこともしばしばです」

また、山本さんは『八重の桜』を書くにあたり、「いままでと違った角度から歴史に光を当てる」ことを大事にしているという。

「これまでは戦争に勝った薩長や明治政府にばかりスポットが当たっていましたが、負けた会津側に光を当ててみると、当時の日本がどうやって成り立っていたか、何が問題だったのかが見えてくる。こうした歴史の未知なる部分を発掘して、伝えるのも大河ドラマの役割であり、作り手の使命だと思っています」

その使命を全うするために、山本さんはいま、全身全霊で『八重の桜』に取り組んでいる。

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