3月中旬の午前9時すぎ、メガネをかけ、髪をなびかせて颯爽と校門を入って行ったB’zの稲葉浩志(50)。この日は長男(12)が通う名門私立小学校の卒業式だ。その傍らには、妻(51)がピッタリ寄り添っていた。
式が終わったのは、昼11時40分ごろ。大勢の保護者たちが続々と校庭へと出てきた。わが子の記念写真を撮ろうとする人々の中に、稲葉がいた。
普段はカメラを前にポーズを取るのが当たり前の稲葉だが、この日ばかりは一眼レフのカメラに顔を近づけ、頬を緩ませてシャッターを切り続けている。
夢中で息子の雄姿を撮り続ける“奮闘パパ”の姿に、傍らの妻も幸せそうな表情を浮かべて見守る。周囲の父兄たちも、稲葉のパパぶりはちょっと意外だったようで、甲斐甲斐しく立ち回ってカメラに息子を収める様子を笑顔で見つめていた。
12時55分、記念撮影を終えた稲葉が1人、校門から出てきた。両手には青いファイルやブックスタンドなど、長男の学用品を抱えている。友達と別れを惜しむ長男のために、“雑用係”を買って出て、荷物を持って1人先に帰ることにしたようだ。
タクシーを止めようと手を挙げた。その表情は満足気で実に清々しかった――。