今回の隔週連載《中山秀征の語り合いたい人》には、教育評論家の尾木直樹さん(68)が登場。多くの人に愛される“尾木ママ”が、現代の親子の付き合い方について語ってくれた。
尾木「スマホの使い方など、リテラシー教育はもちろん重要ですが、子どもにとって居心地がいい家庭が何より大切なんだと思います」
中山「今はダブルワーキングやシングルマザーの家庭も多い。生活すること自体に必死だと、なかなか難しいことかもしれません」
尾木「確かにそれぞれの家庭の事情があるから、一概にはこうすればいいとは言えないですね。シングルマザーの家庭の54%は貧困層という調査結果も。子どもだけに目をかけていたら、飢え死にしてしまう。子どもが傷やあざをつくって帰ってきても、それすら気にかけていられない親が少なくないのが、残念ながら日本の現状なんです」
中山「そこもわかってあげなければいけませんね」
尾木「だから、僕がお母さんたちにお願いしたいのは、子どもと一緒にご飯を食べること。朝晩両方一緒に食べるのが難しければ、どちらかだけでも。毎日ではなく週1〜2回でもいい。一緒に食卓を囲めば、子どものことって見えるんです。食欲がない、声をかけても反応がない、スマホを持っていないなど変化が見えます」
中山「スマホもですか?」
尾木「スマホはいじめの温床になっているので、いじめられていると怖くて見られなくなるんです。だから手元には置かないんですね。10月中旬から11月はとくに要注意です。この時期は、合唱コンクールや運動会などの学校行事でリーダーを務めた子が、いじめのターゲットになりやすい。今まで頑張ってクラスを率いていた子がいきなりターゲットになるから、先生も気づきにくいんです」
中山「『ウチの子は学級委員もやっているし、きちんとしているから大丈夫』と思っているお母さんは、とくに注意すべきですね」
尾木「『学校行くのがつらそう』『いじめでもあるのかもしれない』と思ったら、『無理して学校に行かなくていい』『家で緊急避難しよう』と、親から子どもにしっかり伝えてあげてほしいんです。なかなか親は『学校を休んでいい』って言えないんですけど、命を落としたらどうにもならないですから」
中山「『学校がすべてじゃない』と言ってあげてほしいですね」
尾木「自殺する子どもは、心神耗弱になって、もうこれ以上耐えられないというぐらいの思いで亡くなっていくんです。『死ぬほどの勇気があれば……』と言う人もいますが、勇気じゃない。死んだほうが楽だから、フッと吸い込まれてしまうんです」
中山「大人から見れば、ほんの1〜2年のことかもしれないけど、子どもにはそれがすべてになってしまいますからね」
尾木「だから、地域の図書館やボランティア団体などにも積極的に関わって、ほかに居場所を作ってあげてほしい。学校にしか居場所がないと、そこでいじめられたときに逃げ場がないから、絶望してしまう。日本も学歴社会から学習歴社会、どの学校に行ったかではなく、どんなことを学んできたかに移行してきています。お母さんたちも学校だけにとらわれずに、グローバルな視点を持ってわが子を温かく見守り、優しくみちびいてほしいと思います」