「大泉洋さんが演じる、繁信の兄・信幸が信繁を表した、“物事柔和忍辱にして、強からず”(物事に対する態度は柔和で忍耐強い)という言葉が残っていて、それが一つのキーワードだと思っています。幸村という男は、長い槍を片手で振り回すような怪力の持ち主というイメージらしく、『堺、大丈夫か!?』という声もあったそうです(笑)」
こう語るのは、’16年のNHK大河ドラマ『真田丸』で主人公、真田信繁(幸村)を演じる堺雅人(42)。1年間の主役という大役を得たにもかかわらず、堺には気負いが感じられない。まず、オファーを受けた最大の理由を「三谷幸喜さんの脚本だから」と、柔和な表情で答えた。
「三谷作品を50本できる。しかも、1年間ですよ。正直、主役というのはあまり深く考えず、即答したんです。前回、ご一緒した『新撰組!』では、途中で死んでしまったので、今回は、最後まで生きられるんだ!と(笑)。1話に予感のシーンとして、鎧姿の信繁が登場しますが、それと最終話を見て、全然違う顔をしていたいと思うんです。1年かけて作る顔を楽しみたい」
これまで数多くの作品で描かれてきた幸村の本名は、真田源次郎信繁。堺が考える信繁像とは?
「大泉洋さんが演じる、信繁の兄・信幸が信繁を表した、“物事柔和忍辱(にんにく)にして、強からず”という言葉が残っていて、それが一つキーワードだと思っています。信繁は49年の人生のうち、47年間は裏方だった人。知将として槍を振るうこともなく生きていた人間なんです。それが、大坂夏の陣で、人生の最後に、“日の本一の兵(つわもの)”とたたえられるほどの武者になった。その変わりようがすごくおもしろいと思うんですね。三谷作品には、ホテルの従業員など実務の人を描いた名作が多い。今回は、戦国の実務者がどんなふうにイキイキと描かれるのか。僕もワクワクしています」