「あさは、凛としつつ、柔らかく、しなやかに聞こえるように気をつけています。新次郎は上方歌舞伎の優美な“和事”の二枚目さんのイメージの言葉にしています」
そう話すのは、優雅ではんなりしてなめらかと評判の、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の大阪ことばを指導する、松寺千恵美さん。今、あさやはつが話す大阪・船場の商家で使われている“大阪ことば”に注目が集まっています。そこで今回『〜だす』など商いの“船場風”の品のよさがわかる、大阪ことば7つを松寺さんに教えていただきました。
【かんにん】
「これは身内や、愛情ある人に使うことが多く、『ごめんなさい』の意味です。初めて会った人や道でぶつかったときは『すいません』を使います。『かんにん』に“して”がつく場合は、『かんにんして』となって、音が滑らかに流れます」
【しまつ】
「『しまつする』はケチではないけれど節約する意味の言葉です。“しまつやさん”は節約する人のこと。これから加野屋であさの右腕として登場する、元大蔵省の役人・平十郎(辻本茂雄)がしまつやさんです」
【いけず】
「『あほ』と同じで大阪でいつも使う“公用語”(笑)。いじわるの意味です。かわいいいけずもあれば、菊のようにとげのあるいけずもあります。『あほ』『いけず』とも状況や相手によりニュアンスを変えます」
【おいでやす】
「大阪では『おいでやす』、京都では『おこしやす』になります。柔らかく温かく感じますよね。デパートなどの『いらっしゃいませ』もありますが、それは最近の感覚ですね。今でも古くからの老舗では『ようこそおいでやす』と言われます」
【なんとかならしまへんか?】
「あさが炭坑の組織を変えていくとき坑夫たちに、あさという人間を表現するために使いました。お願いするのも上から目線ではなく相手をたてて認めたうえで妥協点を見つけましょうと情にうったえられる言葉です」
【〜だす】
「あさもはるもよく使っている『〜だす』も大阪ことばの語尾の特徴。船場のお商売言葉で使われていましたが、最近ではあまり聞かなくなりましたね。でも、響きがきれいですよね。京都では『どす』がありますね」
【〜はる】
「大阪では『◯◯はる』は、敬語です。たとえば、『何をお食べになりますか?』は、『何をお食べになりはりますか?』や『何食べはりますか?』、『何食べはる?』と同じ敬語でも親しみ具合によって変わります。親しい間柄でも大げさでなく、距離を感じず、使いやすい敬語です」
大阪ことばは、柔らかい響きなのにストレートに伝わる言葉のマジック。何気ない日常会話が七色に輝きだす、不思議な“スパイス”として、あなたも使ってみませんか?