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昭和の時代も終わりを告げようとしていた’88年4月、SMAPは結成されました。それから28年−−。SMAPは、この平成という時代をどのように駆け抜けてきたのだろうか。私たちに夢を与え続けてくれた俳優としての軌跡を振り返ります。

 

「一人一人の個性とドラマの役割を綿密にリンクさせることで、彼らはそれまでのアイドルとは一線を画し、俳優として開花していきました。そして、閉塞感のある社会の新たなヒーローとして、元気を与え続けてくれたのです」

 

こう語るのは、ドラマウオッチャーの田幸和歌子さん。SMAPのなかで先陣を切ってドラマに登場したのは、稲垣吾郎だった。NHKの朝ドラ『青春家族』でヒロインの弟として、ナイーブな美少年を好演。18歳のときにはメンバーで初めて月9ドラマ(『二十歳の約束』)の主演も。その後、稲垣は『陰陽師』や『金田一耕助』シリーズで時代劇のヒーローも演じる。

 

「大きな転機となったのは月9に脇役として戻ってきた’10年の『流れ星』。ヒロイン(上戸彩)のうさんくさい兄を好演し、“怪人NEW GORO”が誕生します。ここからが彼の俳優第二幕。今年放送された『不機嫌な果実』のマザコン夫も見ていて嫌にならない、美しいままの妖しさが漂っていました。これからも稲垣さん独自のフィルターを通した、エキセントリックな役を期待したい!」(田幸さん・以下同)

 

アイドルではなく、“アウトロー”路線でスタートしたのが木村拓哉。彼が演じた役の中で、今も絶大な人気を誇るのが’93年の青春群像劇『あすなろ白書』の取手治だ。その後、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件に世の中が震撼する中で、心の支えともいうべき圧倒的な存在感で、スターとしての地位を不動のものにしていく木村。『ロングバケーション』のピアニスト・瀬名役で国民的な人気俳優になった後は、『協奏曲』『ギフト』『ラブジェネレーション』『眠れる森』とヒットを連発。

 

「『ビューティフルライフ』で車いすのヒロイン(常盤貴子)に『自分が守る』というセリフには、彼にしか出せないヒーローとしての説得力がありましたよね」

 

田幸さんが香取慎吾に最初に注目したのは、’95年に『沙粧妙子−最後の事件−』で演じた、猟奇的殺人を犯す孤独で美しい少年役だという。さらに同じ年には野島伸司作『未成年』で知的障害のある無垢な少年も演じる。

 

「’04年にはSMAPで初めて大河ドラマ(『新選組!』)に主演。素朴で力強い太陽のような近藤勇を演じ、現場の座長も立派に務め上げました。さらに『西遊記』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』で、子どもに人気の“明るいキャラクター”になりきった後、再び野島伸司さんと組んだ月9の『薔薇のない花屋』で、サイコホラー的な“美しい怖さ”を復活させました」

 

久世光彦演出の国民的人気ドラマ『時間ですよ 平成元年』で’89年に俳優デビューを飾ったのは中居正広。そして’01年の『白い影』、’04年の『砂の器』では名作リメークの主演にも挑戦。

 

「重い社会派ドラマもいけるという新たな魅力が発揮され、彼の人間としての奥深さを見せつけられました。だからこそ今後は、原点となったホームドラマのように、口は悪いが優しくて、時には取っ組み合いのケンカもするような、彼の温かさがにじみ出る役柄をもっと見てみたいです」

 

そして俳優としてはもっとも遅咲きだったのが草なぎ剛。’97年に初主演した『いいひと。』のコピーは《一生に一度の主役》だった。その後の『成田離婚』や『スタアの恋』でも草食系男子を演じ、着実に“時代の顔”になっていった。ターニングポイントは’03年の『僕が生きる道』だ。

 

「人間の普遍性をテーマにしたドラマでシリアス路線へ転向。続く『僕と彼女の生きる道』『僕の歩く道』でも役者としての力量を見せつけました。さらに『任侠ヘルパー』では高齢者施設を舞台にダーティヒーローに挑戦。何を演じても地に足がついていて、誠実さや正直さがにじみ出る。笠智衆さんのように、おじいちゃんになっても渋い役者として活躍しそうですよね」

 

ドラマを通してメンバーそれぞれが時代を映す役割を担ってきたSMAP。

 

「木村さんは強く正しく美しく、草なぎさんは寄り添うように、香取さんは楽しませてくれて、稲垣さんはちょっと視点を変えてくれる。そして中居さんには人生の深みを味わわせてもらいました」

 

これからも俳優としての彼らの活躍が楽しみだ。

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